そろそろ春の声が聞こえてきてもおかしくない時期の3月11日に、日本全体に衝撃のニュースが走りました。東北地方・関東地方を襲ったマグニチュード9.0の大地震です(右の写真は気象庁発表の震度分布図)。
この大規模地震では、併発した大津波により、東北地方の広い地域に大きな被害を与えて、多数の死傷者が出ており、行方不明の方々も数多く、4月に入ってもその全容はまだ完全には解明できていない模様です。
また、家を失われ長い避難所での生活を余儀なくされている方々も数多くおられます。
一方、この大地震は福島県の「原子力発電所事故」等という形でも、日本全体に大きな衝撃を与え、早期の解決が求められています。
今回の大地震の被災地、特に甚大な被害を受けた東北地方の皆様方には心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い災害の終結・復興を心よりお祈りします。
■携帯電話回線等の弱点
今回発生した東日本大震災は、併発した大津波や福島の原発事故の影響も含めて、東日本地域の広範囲にわたって被害をおよぼしています。
また最も大きな被害を受けた東北地方(宮城県・岩手県・福島県)では、固定電話回線、携帯電話回線を問わず、公衆通信回線が通常通り機能することができなかった被災地では、被害状況が十分に把握できず、また被災者間においても安否連絡が十分に取れない日々が長く続きました。
JARLには中央非常通信協議会長(総務省総合通信基盤局長)から被災地の通信確保のためのアマチュア局の積極活用について、3月13日付けで協力要請がありました。この協力要請は、今回の非常災害に際して、被災地近辺に所在するJARL会員に対して、次の事項について善意による協力を要請するものでした。
- 各免許人の保有するアマチュア局の無線設備につき、近隣の災害対策本部や避難所に連絡手段として提供または使用させることをご検討いただきたい。
- ただし、各地の電力事情、災害対策本部や避難所の運営状況によっては、提供または使用が難しい場合もある。
- なお、本件の協力要請は、電波法第74条に基づくものではなく、各免許人の善意による自発的な協力を期待するものである。
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■早々に行動を開始したアマチュア無線家たち
JARLでは、地震直後から情報収集活動を開始、3月12日からはこの震災に際して、JARLの地方局や中央局(RL局)において、主に7.030MHz SSBにより非常通信のワッチを開始し、 JARL中央局JA1RLと地方局JA3RL(関西地方)はTwitterによる情報の収集と発信を開始しました(写真は、JARL中央局JA1RLでの7.030MHzの非常通信ワッチ、Twitterによる情報収集・発信のようす)。
JARL中央局・地方局によるこのワッチ体制は、被災地において、何とか大きな被害から免れたアマチュア無線家の方々にも広く伝わり、被災各地やその周辺地域から非常通信周波数を通じて、徐々に伝わってくることとなり、JA1RL、JA3RLが開設しているTwitter等を通じて、現地のリアルタイムの7.030MHz帯の非常通信周波数の情報が配信されていくこととなりました。
JA1RL、JA3RLによる非常通信周波数のワッチ情報収集活動は、その後も長期間に渡り継続しておこなわれました。
■被災地のハムに通信支援協力を呼びかけ
またJARLでは、被災地でのアマチュア無線による非常通信支援のためのトランシーバーの調達をおこない、被災地における通信支援等のための無線局として送り込むこととしました。
【通信支援にご協力いただける被災地のアマチュア無線家の皆様にお知らせ】
(3月16日の発表)
ハンディートランシーバーは、アマチュア無線機器メーカー各社等のご協力で、合計300台(144MHz/430MHz帯)を寄贈していただきました。
うち先行する100台は「8J1QAAから8J1QDV」の免許を受け3月21日に、JARL事務局において、東北地方本部に運搬していただくボランティアに引き渡しがおこなわれ、
第1便として、JA7AIW山之内俊彦東北地方本部長のもとに送付され、東北地方の被災地の災害対策本部等との通信支援のために被災地のアマチュア無線家への貸与が開始されました(3月22日の発表)。
同様に残るハンディートランシーバーも、「8J1QDWから8J1QLN」の免許を受け、後続便が続々と被災地に向けて旅立ち、現地のアマチュア無線家の方々の協力により、東北地方のさまざまな被災地で、災害対策本部等との通信支援等に活用されています。
事務局には連日ボランティアの方々が訪れ、無線機の送付準備や簡易マニュアルの制作などの作業をおこなってくださいました。また、乾電池や愛用の無線機、震災で入手しにくくなったハンディー機用乾電池ケースを寄付してくださるなど、多くの方々の支援を得ました。
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▲アマチュア無線機器メーカーの協力で集まった300台のハンディートランシーバーは被災地に向けて旅立った。 |
■避難連絡用のレピータ局を開設
またJARLでは、福島原発避難地域の周辺にレピータ局の臨時設置を計画しました。福島県田村市と茨城県那珂郡東海村にレピータ局を臨時設置するため作業を進めていましたが、福島県田村市のレピータは既設の局が修理回復いたしましたので、それを取りやめ別に東海村に設置することで臨機の措置による免許を受け、3月26日にレピータ局JP1YKF(439.76MHz、トーン88.5Hz)を開設、福島原発避難地域や福島県・茨城県の被災地等の情報伝達用として稼働を開始しました。
一方、東北地方においては、地震・津波の大きな被害を受けた宮城県・岩手県の広域をカバーするレピータ局JP7YEP(439.44MHz、トーン88.5Hz)を岩手県一関市に開設、4月2日より運用を開始。JR7WY(439.56MHz、トーン88.5Hz)を岩手県釜石市大平町に、JR7VM(439.60MHz、1292.04MHz、トーン88.5Hz)を岩手県大船渡市猪川町に臨時に移設し、5月15日より運用開始しました。JARLが被災地に送り込んだ通信支援局(ハンディートランシーバー)とともに、被災地の情報伝達で有効に活用されています(4月5日の発表)。
■東日本大震災等を被災された会員の方々への特別措置を決定
JARLでは、平成23年3月11日発生した東日本大震災および3月12日に発生した長野県北部
地震で被災された会員の方々のための、
- 会費や転送手数料のお支払いを会費や転送手数料の満了日から6ヵ月まで猶予できる特別措置
- 災害により書類および賞状などを紛失・消失を余儀なくされた被災地の方々に対しては、申し出により「会員証、アワード、コンテスト」等の再発行する特別措置
について、4月23日に開催された第523回理事会において審議し、両特別措置を実施することを決定しました。
【東日本大震災などで被災された会員の皆様へお知らせ(4月27日発表)】
■世界から届いた励ましと支援の言葉
世界のアマチュア無線関連団体やアマチュア無線家から、東日本大震災の被災地の方々や日本のアマチュア無線家に向けて、お見舞いのメール、被災地支援の申し出などが、3月末日現在で30件以上JARLに寄せられました。
海外から寄せられたメールから、次の8件をご紹介します。
●ARRL会長・Kay Craigie 氏(N3KN)
ARRLを代表して、日本で起こった大変な災害にあわれた方々に対して、私たちが深い悲しみを感じていることをお伝えしたいと思います。
特に、家、家族あるいはご自身の命さえ失われたアマチュア無線家に、ご同情申し上げます。
この非常に危険な緊急事態において、通信を通じて救援機関を支援された日本のアマチュア無線家たちの勇気を称えます。
●KARL理事長・咸泳萬氏(HL2AKB)
全世界が驚きました。貴国の自然の大災殃で、大きい悲しみと不安の雰囲気、同じ趣味の仲間の一人でご慰労のお話を申し上げます。
完璧にはならないと思われますが、早い内に回復され以前の楽しい生活に戻されるようお祈り致します。
今回の地震でご家族と別れた皆様にも再び心からご慰労のお話を申し上げます。
併せて破損されたハムの設備も早めに再建されオンエアーで普段のように楽しいハムライフが出来るよう御祈願致します。
●RAST会長・Chaiyong Wongwuticomjon氏(HS1QVD)
私は、3月11日に貴国を襲い、数えきれない被害をもたらし数千人の人命を奪ったマグニチュード8.9の地震と津波の悲劇に接し、深い悲しみのうちに、RASTの役員と会員に代わってこの書簡を書いております。この悲劇の報に接し、私たちが受けたショックと、日本の人々を思っての悲しみは、表す言葉もありません。
もし、JARLおよび日本のアマチュア無線家を支援できることがありましたら、遠慮なくおっしゃってください。
●RSGB会長Dave Wilson氏(M0OBW)
RSGBの会長として、RSGB理事会及び会員、そして英国のアマチュアを代表して親族や友人を亡くされた日本のアマチュアにお悔やみを、そして私がこのメールを書いているこの時にも災害時通信に携わっているアマチュアに支持のメッセージを申し上げます。
この困難な時に当たって、私たちはいつもあなた方のことを思って、祈っています。
もし、私たちの連盟にできることがありましたら、ご遠慮なくお知らせください。
Best 73
●CRSA国際担当・陳平氏(BA1HAM)
JARLの古い友人とCRSAのアマチュア無線家たちが、この度の深刻な地震と津波に大きな関心を寄せていることをお伝えします。JARLの会員とその家族、全てのアマチュア無線家そして日本の皆様のご無事をお祈りします。また、災害の復旧と、日本の復興が早いことを願っています。
●NZART会長・Roy Symon氏(ZL2KH)
NZARTと全てのニュージーランドのアマチュア無線家を代表して、JARL会員そして日本の皆様に、この度の悲劇について心からのお見舞いと支援の気持ちをお伝えしたいと思います。私たちは、皆様のために祈っています。
●SARL会長・Dennis Green氏(ZS4BS)
ここ南アフリカで、私たちは日本の地震と津波がもたらした惨状を見つめてきました。TVや新聞の画像が、傷ついた方、亡くなられた方、家屋などの被害を伝えています。SARLの会員及び理事会を代表して、ご家族や友人を亡くされたアマチュアの皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災地との通信によって救難・救援活動を支援しているアマチュア無線家たちのことも想っています。私たちの祈りと想いが、あなたがたとともにあることを信じてください。
●RCP 会長・Francisco Petersen氏(ZP5PVM)
RCPから、JARL、JARL会員そして日本の皆様が、この大変困難な時を持ちこたえて復旧されますように、心からのお見舞いと支援の想いをお送りします。
私たちの気持ちは、あなた方と共にあります。
■お見舞いや支援等の申し出をいただいたおもな国や地域(順不同)
スリランカ、イスラエル(連盟IARC会長)、アンドラ(連盟URA会長)、ウルグアイ、ドイツ(連盟DARC)、スペイン、モルドバ、フランス、イギリス(連盟RSGB会長)、ドミニカ、アメリカ(連盟ARRL会長ほか)、韓国(KARL連盟理事長ほか)、モンゴル(連盟MRSF)、ベルギー、スウェーデン、ポーランド、ギリシャ、トルコ(連盟TRAC会長)、香港(連盟HARTS非常通信担当)、ニュージーランド(連盟NZART会長ほか)、パラグアイ(連盟RCP会長)、中国(連盟CRSA)、南アフリカ(連盟SARL会長)、ブラジル、オーストラリア(IARU Region 3非常通信委員会議長)、メキシコ(IARU Region 2事務局長)、タイ(連盟RAST会長)、ルーマニア、アイルランド(連盟IRTS会長)
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今回の大震災に当たって、励ましと支援の言葉をお送りいただいた、世界のアマチュア無線団体やアマチュア無線家の皆様方に心より感謝の念を表します。
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