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神奈川県厚木市の七沢希望の丘初等学校の児童たちが、ARISSスクールコンタクトで油井亀美也宇宙飛行士と交信に成功
平成27年12月2日、神奈川県厚木市の七沢希望の丘初等学校の8名の児童が、ARISSスクールコンタクトで、国際宇宙ステーションに長期滞在中の油井亀美也宇宙飛行士との交信に成功しました。
七沢希望の丘初等学校のスクールコンタクトは国内では84回目ですが、神奈川県内では2010年3月4日に実施された野口聡一宇宙飛行士と出身中学校(神奈川県茅ヶ崎市立浜須賀中学校)の生徒たちとの交信、そして2011年8月16日に神奈川県横浜市立倉田小学校で実施されたスクールコンタクト以来で3回目です。
七沢希望の丘初等学校は厚木市内では唯一の私立小学校で、東丹沢の麓となる厚木市七沢地区の小高い丘の上に位置し、総児童数39名の、小さな小さな小学校です。
同校の発表によれば、「基本となる生活態度を身に付けたあとで、児童が自分自身で問題を設定し、解決していける子どもを育てる」「こうしたいという願いを実現しようと自ら考え、判断、行動して夢や希望への歩みを進める子どもを育てる」「人や自然、社会などの多様な存在や価値観を尊重し、共に生きていこうとする子どもを育てる」の三つの教育理念のもとで児童の教育活動をおこなっているそうです。
●ことのはじまりは保護者(アマチュア無線家)の実施提案
実は、七沢希望ヶ丘初等学校のスクールコンタクトへの取り組みの発端は、同校児童の保護者の中に、厚木アマチュア無線クラブに所属している熱心なアマチュア無線家から実施提案を受けたことがその発端と言います。
「児童たちに、国際宇宙ステーションに今まさに滞在する宇宙飛行士とおしゃべりしてもらうことができる」、その保護者の方の提案は、同校に勤務の教職員の方々にとっても、たいへん魅力的なイベントとして大いに話題になり「実施したい」という総意に結びついたそうです。
さて、同校の校長先生である島根照夫校長は、アマチュア無線家の免許を持っています。そして実は、島根照夫校長の前職は「青山学院初等部」の校長先生で、定年退職の後、七沢希望の丘小学校の校長先生として着任されました。
以前からARISSスクールコンタクトに興味をお持ちの方なら、すでにお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、青山学院初等部は2004年9月17日に、青山学院創立130年記念事業の一環としてARISSスクールコンタクトをアマチュア無線クラブで実施しています(国内9例目、右の写真)。島根校長先生はまさにその当時、青山学院初等部の先生だったのです。
島根校長先生は「スクールコンタクトは、以前の職場で実施経験がありますから、その段取りや準備がいかに大変かは十分に分かっていました。そして、その苦労をしてもあまりのある魅力的なイベントであることも分かっていました」と言います。
こうして、七沢希望の丘初等学校は、手始めにARISS Japanに実施申込書を提出することになりました。
さて七沢希望の丘初等学校には、島根校長先生のほかアマチュア無線の免許を持った先生が2名いたのです。将来的なARISSスクールコンタクトの実施を踏まえて、この2名の先生を顧問として、同校の「アマチュア無線クラブ」を設立し、アマチュア無線の免許取得に挑戦し、今年4月にはうち5名の児童がアマチュア無線の免許を取得したそうです。
島根校長先生は、前職の青山学院初等部のアマチュア無線クラブの合宿に、創立したばかりの「七沢希望の丘学校」のアマチュア無線クラブ顧問の2名の先生に参加してもらうことで、小学校のアマチュア無線クラブの交流を深める、来たるべきARISSスクールコンタクトのためのノウハウや、情報の交換を試みました。
その一方で、島根校長先生は「七沢希望の丘初等学校でARISSスクールコンタクトを実施するには、使用機材の面でも運用の面でも、地元の多くのアマチュア無線家の協力が重要だ」と考え、スクールコンタクトの実施提案のあった保護者が所属している「厚木アマチュア無線クラブ」をはじめ、地元厚木にある「アンリツ厚木アマチュア無線クラブ」「日産自動車テクニカルセンターアマチュア無線クラブ」「FMカオンアマチュア無線クラブ」等に協力をお願いして、機材面や実施方法に関する準備や検討を進めることとなりました。
その後、ARISSから平成27年10月に交信スケジュールが組めそうだと、実施に関する連絡を受けましたが、準備期間の関係もあってこのときは延期し、平成27年12月2日の実施決定に至ったのです。
●実施当日
七沢希望の丘初等学校では、ARISSスクールコンタクトの実施に当たって、同校の児童・保護者はもちろん、同校のホームページや、「厚木市初 宇宙へ39人の挑戦」というポスター掲示などを通じて市内などから、広く一般見学者等を募ったそうです。
そして迎えた当日は、同校の職員や地元アマチュア無線家の協力者によって、会場の設営がおこなわれました。
交信会場は、地下の多目的ホール、アンテナをグランドに設営し、大型のプロジェクターを使用した、保護者や一般の見学者向けのサテライト会場を、1階の教室、1階テラスに設けました。
ちなみに、交信会場と見学者の会場を別会場に設定するサテライト会場式の運営は、2004年に青山学院初等部が実施した方法と非常に似通っています。
17:30から実施された開会式では、島根校長先生の「宇宙への夢」というお話し、6年生児童よるプロジェクトなどの説明、「交流を深めている「青山学院初等部アマチュア無線クラブ」のメンバーも迎えて交流記念式も実施され、いよいよ本番を迎えることとなります。
交信するアマチュア無線クラブメンバーは、ここまで一生懸命、宇宙や、無線に関する勉強などを進めてきた8名です。
国際宇宙ステーションとのスクールコンタクトのために臨時に開設した社団局は「8N1NKSG」。マイクコントローラーの八田一俊さん(JM1ESG)が、交信開始予定時刻の18:33から国際宇宙ステーションのアマチュア局NA1SSの呼出を開始しましたが、なかなか応答が得られません。
NA1SSの呼出を開始した約5分後の18:38、ついに油井亀美也宇宙飛行士からの応答があり、8名の児童は交代で油井宇宙飛行士に交代で24問の質問ができ、交信終了後場内には大きな拍手が響き渡りました。
ちなみに、ARISS運用委員の安田 聖さん(7M3TJZ)によると、12月に予定の第45次・第46次長期滞在クルー交代のソユーズロケット打ち上げに備えて、国際宇宙ステーションが高度を上げたことから、交信予定時刻が約5分遅くなったとのことです。
交信終了後、会場では今回のスクールコンタクトの実施に、惜しげもなく協力をしていただいた、地元のアマチュア無線家のスタッフの方々の紹介と、保護者の代表の方から記念品の授与がおこなわれ記念撮影の後、全日程を無事終了しました。
■七沢希望の丘初等学校のスクールコンタクトの実施スタッフとして、協力された地元アマチュア無線クラブメンバーの方々(順不同、敬称略)
氏名 | コールサイン | 所属クラブ |
徳久昌和 | JI1WSI | FMカオンアマチュア無線クラブ |
八田一俊 | JM1ESG | 厚木アマチュア無線クラブ |
岩崎正二 | JR1KDA | 厚木アマチュア無線クラブ |
小野 勉 | JO1QOR | 厚木アマチュア無線クラブ |
飯吉政春 | JF1GTE | 厚木アマチュア無線クラブ |
一杉佳範 | JM1LKI | アンリツ厚木アマチュア無線クラブ |
金澤紀応 | JP1TVC | アンリツ厚木アマチュア無線クラブ |
菅原博昭 | JO1KXP | 日産自動車テクニカルセンターアマチュア無線クラブ |
佐藤修一 | JQ1NDH | FMカオンアマチュア無線クラブ |
(12月08日)
(12月11日更新)
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