■JARL南極局8J1RLのこどもの日特別運用を実施
▲交信成功後に記念撮影
南極昭和基地に開設されたJARL南極局8J1RLは、毎年5月5日のこどもの日に併せて、日本国内の小・中・高校生を優先して交信をおこなう「こどもの日」の特別運用を実施しています。今年は、第59次日本南極地域観測隊が「こどもの日」の特別運用を実施しました。
東京都豊島区のJARL事務局のJARL中央局JA1RLは、この日に併せて8J1RLとの公開運用を実施。当日は16:00前から、事前に運用申込みがあった熱心な小・中・高校生ハム11名ほかが集まり、運用開始予定の17:00を待ちました。
運用開始の待ち時間の間、JARL事務局会議室では、JG1KTC尾義則JARL会長(JA1RL運用委員会委員長)の挨拶、当日集まった子供たちの自己紹介、南極OB会アマチュア無線クラブ会長のJR1FVH小林正幸さん(第25次、第46次南極観測隊員、)による南極昭和基地でのアマチュア無線運用にまつわる興味深いお話し(右の写真)や、7K2GMJ新谷一徳さん(JA1RL運用委員会)から南極昭和基地との、具体的な交信の方法等の説明がおこなわれました。
●近年の南極昭和基地との通信事情
往年の南極昭和基地との通信は短波帯の電離層通信でおこなわれていましたが通信衛星回線の整備が進んだ現在では、電話やインターネットなどによる通信が普通に活用されています。
この辺の事情は国際宇宙ステーションについても同様で、通信という意味合いでは南極も宇宙もかなり距離が縮まっており実に便利な時代です。
一方、そんな時代でも短波帯のアマチュア無線による南極との交信は電離層反射を介して、1対1で直接電波を送り届ける点、コンディションによって交信ができるかできないか分からないという偶然性がスリリングな醍醐味なのです。
●交信を開始
今年のJA1RLの運用に参加してくれた11名は、3・4アマの免許を持った子供たちですので運用は21MHz帯とし、無線機は10W機、50W機、予備として200W機をそれぞれ準備しました。
定刻の17:00ごろから、JO1LDY黒木重弘さん(JA1RL運用委員)が、8J1RLの呼出を開始しました(右の写真)。しかしJA1RLの呼出に対して、8J1RLからのコールバックが聞こえてこないのです。
昭和基地に電話により確認を取ってみますが、どうやらJA1RLの21MHz帯の信号は昭和基地では聞こえているようなのです。
そこで逆に8J1RL側から21MHz帯による呼出をおこなってもらうことにしましたが、JA1RL側ではコールが確認できませんでした。
ソーラーサイクル24の末期でもありHF帯ハイバンドのコンディションがボトムに近づいている昨今ですから、21MHz帯がこの日にオープンしなかったのはある意味やむを得ないのかもしれません。
会場に集まってくれた子供たちにせめて南極との交信のようすを聞いてもらうことを意図して、運用バンドを14MHz帯に変更してコールすることとしました。
すると、14MHz帯では8J1RLのコールバックがあり、子供たちに交信してもらうことは残念ながらできませんでしたが、昭和基地との交信のようすを聞いてもらうことはできました。
右の写真は、8J1RLと14MHz帯での交信のようすで、子供たちはJARL南極局8J1RLとの交信に熱心に聴き入っていました。
●南極観測隊員の皆様方のご厚意で
交信の終了後には、南極観測隊の方々のご厚意で、なんと嬉しいことに、交信会場に集まった11名の子供たちの質問に電話で一問一答で答えてくださることとなりました。
これには子供たちも、同行の保護者の方々も大喜びで、普段から聞いてみたかった南極に関するそれぞれの質問をすることができ、有意義なひとときを過ごしていただくことができたようです。
一方で、集まった子供たちは今回の体験で「日本と南極の距離感」と、「HF帯の電波伝搬の難しさ」を改めて実感する体験と感じていたようで、来年もチャンスがあれば参加してみたいという思いを胸に会場を後にされたようです。
(5月5日、速報を掲載)
(5月7日、詳細レポートを掲載)
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