■
名古屋工業高等学校無線部の生徒たちが国際宇宙ステーションと交信に成功
2018年8月13日、愛知県名古屋市昭和区の名古屋工業高等学校無線部の生徒たちがARISSスクールコンタクトで国際宇宙ステーションに長期滞在中のリチャード・アーノルド(KE5DAU)宇宙飛行士との交信に成功しました(右の写真はコントロールオペレーターJA2YNI顧問の林 尚志先生とJS2EDI奥山希望君)。
同校のスクールコンタクトは、全員アマチュア無線の免許を持った無線部のメンバーによる交信で、学校のクラブ局JA2YNIのコールサインで実施されました、国内でのスクールコンタクト成功は全国で94例目となります。
スクールコンタクトで交信したメンバーが全員アマチュア無線の有資格者であるケースは国内で7例ありますが、そのうち学校のアマチュア無線クラブによる実施は3例目で、2012年10月23日に実施された「茗溪学園高等学校・中学校科学部無線工学班」以来となります。
今回の名古屋工業高等学校のスクールコンタクトについて、同校無線部顧問の林 尚志先生(JR2VSM)からレポートをお送りいただきましたのでご紹介します。
★ ★
名工学園名古屋工業高等学校は、1920年創立の私立の工業高等学校で建築科、土木科、電気科、情報技術科、機械科の5科からなり、生徒数1,355名の男子のみの工業高等学校で再来年には創立100周年を迎えます。
資格取得や生活指導に力を入れており、第2種電気工事士の合格者数はほとんど毎年全国第1位(昨年の合格者数は第2位)であります。他に危険物取扱者や各種施工管理技士の合格者数も多く、18歳で社会人へというスタンスで生徒を集めている高校です。
JA2YNI名古屋工業高等学校無線局はコンテストを活動の中心にして、2012年から活動を再開しました。コールサインは過去に本校で使用していたものを使用しています。学校内でのことですが、今年の4月には活動が認められ、アマチュア無線同好会から無線部へ昇格し、活動の幅も広がってきています。ここ数年はJARL主催コンテストの電信電話マルチオペジュニア部門で東海地方上位を取れるようになってきていますが、「全国第*位」という賞状はまだもらったことがなく、今後の目標となっています。
毎年春に新1年生が入部してくると、まずは第三級アマチュア無線技士の免許を取得してもらいます。他の資格の勉強と重なり、なかなか勉強がはかどらない場合もありますが、夏のフィールドデーコンテストまでには間に合うように指導しています。
新1年生に、どうして無線部に入部したかを聞くと、「モールス符号に興味を持った」という生徒が多く、モールス符号のマスターには特に力を入れています。
後にもご紹介しますが、今回のスクールコンタクトは急に実施が決まったもので、1年生部員の免許取得が間に合うかという心配な面もありました。無事に全員第3級アマチュア無線技士以上の免許を持った状態での参加となりました。
今回のスクールコンタクトを実施することになった発端は、JARL登録クラブの会議で、「とても感動をするものであることを耳にしたことからです。ごく普通の高校生が宇宙飛行士とお話をするチャンスはほとんどありません。しかし、アマチュア無線の免許があればそれが可能になる。このアマチュア無線の特権を使わないのは、もったいないと思いました。
そこで、2017年8月にJARL愛知県支部長の磯 直行さんに、本校でも実施したいと相談をして、本校校長の確認をもらい、書類の作成に入り、同年9月下旬にARISS Japanに書類の提出を完了しました。
長い待ち時間の後、ARISS JAPANから「2018年6月上旬に8月13日〜19日の期間に実施できそうだが対応可能か?」という連絡が入りました。
「生徒は夏休み中であり準備はしやすい。さらにお盆休みと重なるということは、他の部活動の試合等とぶつかる可能性は少ない」ということで、ぜひ実施したいと即決しました。
しかし、実施1カ月前ごろに正式な実施日が決まるとは聞いていたのですが、8月上旬になっても、8月13日〜17日のどの日になるか分からない状態でした。
「生徒たちには、宇宙飛行士に対する質問を考えなさい」と、言ってもまだ具体的に何を質問すればよいか、浮かんでこないようでした。夕暮れ時にISSを肉眼で見たり、ISSのことに関して勉強会を開き興味関心を引くようにしたりして、質問が集まり始めました。
8月上旬はフィールドデーコンテストの直前です。スクールコンタクトの準備のかたわらで、フィールドデーコンテストの準備を並行して進めることは結局できず、フィールドステーションとして移動することは不可能と判断し、固定から運用することにしました。
▲クロス八木アンテナを組み立てるJA2YNI部員 |
▲開会セレモニーで紹介される生徒たち |
そして8月7日、突然、13日にスクールコンタクトを実施することが決まったと連絡が入りました。「えっ、もう1週間もないの?」
ここからは大慌てとなりました。まずは生徒たちの質問を英語の先生の力を借りて総チェックしました。生徒はこの英語の質問を覚えなければなりません。
一方、アンテナの建設や機材のチェック、教室の設営、広報、教育委員会への後援要請などもしなければなりませんでした。幸い、磯支部長をはじめJARL愛知県支部の方々が快く手伝ってくださり、なんとか前日までに形にすることができました。
8月13日の当日になると、生徒たちの顔つきも変わりました。空き時間に一生懸命最後のチェックをしています。リハーサルをおこなうたびにうまくなり、声も出るようになりました。JARL東海地方本部の木村時政地方本部長からは、「きっとうまくいきますよ」、と激励をいただき自信を持つことができました。
そしていよいよ本番が始まり、NA1SSを呼び出しました。数回のコール後、かなり強いシグナルで宇宙飛行士のリッキーさんの声が入ってきました。順番に生徒たちが質問していきます。緊張して早口になっている生徒もいましたが、なんとか通じる英語を話せているようです。練習のときよりテンポよく進み、生徒8人の22の質問が終わりました。時間が2分残っていたことから、最後に「今、名古屋は雷ですよ」ということを伝えてファイナルとしました。
そして最後にリッキーさんの「SAYONARA」の声を聞くことができ、こちらからは「Thank you Ricky!」とメンバー全員でメッセージを送り、素晴らしい終わり方ができ大きな感動を味わうことができました。
生徒たちの終了後の表情は達成感で溢れていました。
★ ★
日本のARISSスクールコンタクトは特例交信で小学生・中学生はアマチュア無線の免許がなくても交信することができるのですが、小・中・高校のアマチュア無線の免許をすでに持っている皆さんは、友達を誘って免許持つ仲間を増やして、ぜひ有資格の楽しいハム仲間たちと一緒にARISSスクールコンタクトにチャレンジしてみて欲しいと思っています。
(8月15日)
|