第16回 IARU ARDF
世界選手権大会
2012年9月10日〜15日
セルビア共和国で開催

■多彩な開催内容

 2012年9月10日〜15日、セルビア共和国の高地、コパオニクで33カ国から約600名の参加者、 うち450名の代表選手により、第16回ARDF世界選手権大会が盛大に開催されました。
 今回のホスト団体のSRSセルビアアマチュア連合は、これ以外にも9月5日から「ワールドカップ2m」を2回、 「ワールドカップ80m」を2回の合計4回の競技を、また本大会の開催中には、「スプリントARDF」と 視覚障害者の「ブラインドARDF」の世界大会をおこない、さらに最終日の15日にはFOXオリエンテーリング(Foxoring)を開催しました。 「ブラインドARDF」を含め合計9回の競技を開催したことになります。

■日本選手団コパオニクに集結

 JARL日本選手団はそれぞれ異なる空路を使って、セルビアの首都であるベオグラード に向かいました。最も早く7日に到着した8名の選手と出田代表(JF1RPZ)は8日からの ワールドカップから参加、8日に到着した9名は9日から参加と、今までになかった日本 チームの試みとなりました。
 10日(月)には全ての日本からの参加者、団長の木村時政(JA2HDE) ARDF委員長以下選手20名、 役員7名、引率他5名、合計32名がコパオニクに集結しました。 翌11日(火)は、いよいよ始まる選手権に向けて選手全員がトレーニングに参加し、 セルビアの地勢と電波の感触を再確認していました。
 この日の夕方開催された開会式では、静岡県立浜松工業高等学校の西野晃平選手(JA2-34574) が、日本国旗を掲げて堂々と入場、壇上には各国の代表がズラリと並び、会場は熱気にあふれ 一気に盛り上がりました(右の写真:各国の学生選手と交流を深める日本選手団の学生選手たち)。

■開催国セルビアはどんな国?

 開催地のセルビア共和国は、バルカン半島の中西部、ヨーロッパの南東に位置する小国 (北海道とほぼ同じ面積)です。人口は愛知県とほぼ同じ750万人で、およそ100名の日本人が住んでいます。
 独立前のユーゴスラビアの時代、貧困のセルビア・モンテネグロに日本からの度重なる支援 をおこなったことを、セルビア国民は忘れておらず、昨年の東日本大震災では、いち早く、 セルビア国家及び市民活動により多大なる見舞金とお見舞いの言葉が届きました。 親日家が多く、日本人への評価の高い国でした。
 開催場所のコパオニクは、首都のベオグラードよりバスで5時間あまり登った標高1,774mの高地で、 ヨーロッパでは冬のスキーリゾートとして有名な場所です。 高地であることから空気も爽やかで、日中でも20度位の気温で競技には最適でした。

■世界大会競技初日

▲第1競技参加中の選手のひとこま。左から、JN2LPL齋藤利幸選手(M40)、 JA7-31015平川百佳選手(W19)、JQ1LCW山上淑子選手(W60)

 代表選手のみが参加できる選手権大会の初日、12日(水)は快晴、同日発表された競技会場 は滞在ホテルに隣接するエリアで、ゴールは前日のトレーニングに使われた場所の近くでした。 起伏に富んだ森林地帯で走行は比較的容易であるものの、選手を惑わす電波が飛び交い、 容易には探索できないと直感しました。競技は既にルール化しているように2mと80mが同時に おこなわれましたが、特に2mの競技は難しかったようです。そんな中でも日本チームの皆さんは 善戦し、実力者M50の大野政男選手(JR1EYZ)の9位の成績の他、同クラスで23位の石塚 晶選手(JA0PZC)、 M40クラス23位の清水 茂選手(7M3RMD)、M60クラス18位の西内秀一選手(JA7EWX)らが元気に ゴールしてきました。

■初めてのスプリントARDFに果敢にチャレンジ

 翌13日(木)は、従来であれば選手権大会の中日に当たり、選手はのんびり過ごせるところですが、 今回はスプリント大会が準備されていました。日本では全くおこなわれていない競技でしたが、 果敢にも次の選手が挑戦しました。
 平川百佳選手(JA7-31015、W19)、田代瑞葉選手(W21)、山上淑子選手(JQ1LCW、W60)、 黒木健太郎選手(JL4NDN、M21)、清水 茂選手(7M3RMD、M40)、高雄宏治選手(JQ1CON、M40)、 出田 洋選手(JF1RPZ、M50)、高橋芳雄選手(JK4VBZ、M50)、以上8名の方々です。
 このルールを簡単に説明しますと、スタートは2分間隔、探索するTXは各5個の2つのループがあり (計10個)第1ループと第2ループは異なる周波数です。スタートして、まず第1ループのTXを探索 してから次のループに入る前に、スペクテーターというチェックポイントがあり、これをチェックして から次の第2ループのTXを探します。スペクテーターは第1ループの終わり、そして第2ループの始まり ですので、後戻りはできません。TXは12秒間隔で送信します。距離は短く、TXごとの間隔と、 スタートと最短のTX間隔は100m以上、この競技は比較的狭い範囲でおこなうことが出来るため、 スペクテーターあるいはビーコンを観客の近くに置いて、一般の方々に観覧していただくという目的もあるようです。
 今後は世界大会と併設して、スプリントやFOXオリエンテーリングの大会も、同時開催されることが ワーキンググループで検討されています。我々も乗り遅れないように対応が迫られます。

■大会2回目世界選手権競技

▲第2競技参加中の選手。JL2THY石川智道選手(M21、左)、 JA2-34551鈴木雄也選手(M19、右)

 次に14日(金)2回目の本大会です。朝から雲が立ち込め外に出ると顔に冷たいものがあたります。 朝6時からの朝食が終わるころには天気も回復し、選手は全員バスで30分位の場所まで移動します。 到着したエリアは、これといった目標物が全くない森林地帯で、わずかな未舗装道路があるだけ、 U字型の湿地帯と、同じような丘陵が幾重にも連なり、自分の位置を見失うであろう厳しい地形です。
 この日はようやく競技にも慣れてきたのか、日本選手は大健闘しました。 特にM19の選手3名(26位:西野晃平選手(JA2-34574)、27位:鈴木雄也選手(JA2-34551)、 31位:小林大祐選手(JA2-34565))は、規定の6個のTXを時間内に探索しました。 世界大会でこのようなパーフェクトな記録は初めてのことで、日本のM19のレベルがここまで 上がったことは、多くの関係者のご尽力によるものと思います。
 その他では、山上淑子選手(JQ1LCW)が7位と大活躍しましたが、10位、 11位の2人のアメリカチームに、団体3位のメダルを持っていかれてしまい残念でした。 W60クラスで参加を辞退されました皆様の、今後の積極的なご参加をお願いしたいと存じます。
 その他おもな結果ですが、 W19クラスの平川百佳選手(JA7-31015)が16位、W21クラスの田代端葉選手(JA7-31019)が25位、 M21クラスの杉原聡志選手(JE1KAF)が29位、M40クラスの齊藤利幸選手(JN2LPL)が32位、 M50クラスの大野政男選手(JR1EYZ)が12位、M60クラスの谷田部幸行選手(JE1XXO)が16位、 M70クラスの早川豊徳選手(JA1MVQ)が13位の成績をそれぞれおさめました。

▲第2競技参加中の選手。JA2-34574西野晃平選手(M19、左)、 JK4VBZ高橋芳雄選手(M50、右)

■JARLのメンバーとして世界の人々と友好を深める

▲休息日。世界の選手たちとレクリエーションを楽しむ日本選手団のみなさん

 最後に、今回も多くの皆さんの参加によって、世界の大勢の方々との交流がおこなわれました。 気さくでフレンドリーな人々ばかりでした。滞在期間中は人種や国境を越えて心を通わせることができました。
 日本チームの紛失した財布も隠匿されることなく、フロントに届いていました。
 また競技中に怪我をした選手に優しく声を掛けていました。視覚障害者には先を優先し優しく見守っていました。
 そしてとても嬉しかったことがありました。友人のチェコのカロフチ選手が同国の女性選手と結婚し、 赤ちゃん共々参加しておりました。競技以外はいつも赤ちゃんと一緒で優しいお父さんになっていました。 彼は今回もメダリストです。
 また、ウクライナのアレキサンダー、アレキサンドリアの2人も結婚して参加していました。 彼はモスクワ大学で日本語を学び日本語が話せます。美しい奥さん共々親日家でバンケットでは、 日本の皆さんと別れを惜しんでいました。
 それぞれの皆さんに、それぞれの出会いがあり、また別れもありましたが、アマチュア無線の趣味により、 世界平和を少しだけ語れる機会を得たことはこの上ない幸せでした。
 そしてARDFを通じてJARLを少しだけ世界にアピールできたのではないでしょうか。

(レポート:JR0AIJ新井喜雄さん、写真提供:JP3EVM 植木 等さん)

 全競技結果は第16回IARU ARDF世界選手権大会公式サイトをご参照ください。



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