ICOMならやま研究所で国際宇宙ステーションと交信に成功

ICOMならやま研究所で
国際宇宙ステーションと交信に成功


▲令和6年7月29日、交信に成功!

◆はじまり
 令和4年11月、ICOMならやま研究所を会場として、奈良市内の小学生を集めて、悲願の奈良県初ARISSスクールコンタクトの計画が動き出しました。実施主体はJARL奈良県支部、コントロールオペレーターは、歌手・JARL広報大使のJH1CBX Masacoさんです。

◆準備から実施まで
 令和6年4月下旬、関西地方本部長から7月29〜8月2日の週の実施が決まったと連絡がありました。5月中旬、ならやま研究所で関係者が集まり、施設見学のあと、実施に向けた協議をしました。ISSとの交信には、ならやま研究所のコールサインJK3ZNBを使うことが決まり、このあと実施日が迫っているなかICOMのJN3RVM中嶋さんが実施に向けた各方面との連絡調整を堅実に進めてくださいました。
  • 6月・・・参加児童の募集・決定
  • 7月1回目の事前研修会・・・ISSやARISSについて学習、質問案の作成、質問順の決定
  • 7月2回目の事前研修会・・・英訳された英文により交信練習・アンテナ設置
 参加児童は奈良市立左京小学校から11名、奈良市立椿井小学校から4名、計15名。研修会では、児童の理解の早さ、積極的な発言、英語に対する気後れのなさなど驚かされました。保護者の方々には、児童を近くで温かく見守っていただき、送り迎え、英訳や当日の日本語訳など多くお世話になりました。
 学習会では、交信を約10分間に収めるため、マイク前への交代移動、確実にPTTを押すこと、始めに名前、終わりには”over”を付け加えることを伝えたうえで、英語の練習や模擬交信練習を重ねました。回を追うごとに真剣さも増し、声も大きく堂々としたものになっていきました。

◆いよいよ当日
 午後から関西ARISSプロジェクトチームの方々が、それぞれの分野で着々と準備を進めてくださいました。ICOMによる会場の飾りつけ、そして中嶋さんは児童のかっこいい名札やYouTube LIVE配信の準備やすばらしい開始画面を作ってくれていました。

 午後7時から挨拶、ARISS概要の説明に続き、児童が最後の交信リハーサルに臨みました。Skypeで繋いだ宇宙飛行士役の関西在住ネイティブの方は、時折関西弁を織り交ぜ、緊張感に包まれる会場の雰囲気を和やかにしてくれました。児童たちのマイク前への交代移動やPTT操作、英語など最高の仕上がりを感じさせました。


▲屋上のアンテナ

▲研修中の様子

 午後7時52分、「OR4ISS,this is JK3ZNB.do you copy ? over」の呼びかけに対し、ISSのDr. Mike Barratt宇宙飛行士(KD5MIJ)から元気な声が返ってきました。ISSからの信号は、関西ARISSプロジェクトチームのアンテナ・受信機担当のご努力のおかげで、終始安定していて児童との交信は順調に進み、15人の児童の質問と宇宙飛行士からの回答を完全に終えることができました。


▲交信開始前、緊張の面持ち

 交信が終わった瞬間、無事成功に終わった喜びと安堵感で、会場は拍手に包まれました。緊張から解かれ、達成感いっぱいの児童に、関西ARISSプロジェクトチームのJL3JRY屋田さんがひとりずつ感想を聞いていきました。「一生に一度しかない経験かも知れないので、できてよかった」、「英語を習っていて、いつ役に立つかわからなかったが、今役立ってよかった」、「始め、何回も呼び出してドキドキした」、「宇宙から自分の名前が返ってきて感動した」など聞けました。

 宇宙飛行士からどのような答えが返ってきたか、保護者お二人が協力してくださり、訳したものが発表されました。「袋に入れた飲み物にストローを入れて飲む」、「1日2時間半運動をする」、紙飛行機がどのように飛ぶかの質問には、実際に実験してみて「何かに当たるまで、まっすぐ飛ぶ。地球上とは変わった飛び方をする」、「地球はとっても美しく、特別なもので守っていかなければならない気持ちになる」など、宇宙にいるからこそ聞ける、地球を愛し、地球の美しさに感動する宇宙飛行士の姿が見て取れました。


▲宇宙飛行士からの回答を日本語訳で紹介した保護者の方々

 この体験は、参加した15人だけでなく、その保護者の方々や、見守った方々にとって大きな思い出・大きな宝物となりました。
 最後になりましたが、保護者のみなさま、実施に多大な力を貸していただいたICOMのみなさま、関西ARISSプロジェクトチームのみなさま、関係者のみなさま たいへんありがとうございました。

[レポート:JARL奈良県支部長 南 賢一(JN3ANO)]