(社)日本アマチュア無線連盟 平成18年8月23日、総務省において「電力線搬送通信設備の技術基準等の整備に関する無線設備規則の一部改正案」について、電波監理審議会の意見の聴取がおこなわれました。JARLは、海江田専務理事及び森技術研究所所長が会長の代理人として出席し、次のとおり意見を述べました。 「当連盟としては、高速電力線搬送通信の導入につきましては、電波環境の悪化が懸念されることから、総務省の研究会に参加させて頂き、アマチュア無線などへの影響が出ないよう、意見を述べてまいりました。また、CISPR委員会傘下の関係小委員会にも出席し意見を述べさせて頂きました。 意見を述べた理由については、次のとおりです。 JARLは、当初よりPLCはHF帯の電波環境を悪化させるものであるとの認識のもとに、12回にわたる高速電力線搬送通信に関する研究会の場において一貫して強く反対を唱え続け、この研究会でコモンモード電流の準尖頭値を「30dBμA(2〜30MHz)」とするとの結論が出されたことに対し、JARLは「さらに実験等を積み重ねて見直すべきである」と主張いたしました。 その後、検討の場は、総務省の情報通信審議会 情報通信技術分科会、CISPR委員会及びその傘下の「高速電力線搬送通信設備小委員会」(PLC設備小委員会)に移されましたが、足かけ2年間にわたる審議や実験結果を受け、最終段階である本年6月5日に開催された第5回PLC設備小委員会の場において、座長から「環境雑音を超えないことが前提であり、実験の結果では10dB〜10数dB程度高い値が出ていた。電波環境維持の観点からアマチュア無線などの無線局は保護されなければならない」との見解が示され、「昨年の研究会の報告を見直し、15〜30MHzまでの許容値を10dB削減し、準尖頭値20dBμAとする」との修正案が示され審議がおこなわれました。 許容値を10dB下げることは、中立的といわれる研究会の委員の中からも、厳しすぎるのではないかとの意見や、この提案の値より数dB緩和すべきとの意見などもあり、PLC推進側からは昨年の研究会の値にもどすべき等反対の意見が強く出されました。 これに対しJARLは、「研究会における許容値は周囲雑音(背景雑音)の電界強度を超えないとする共通認識に基づき15〜30MHzの範囲の漏えいレベルを10dB下げる提案を強く支持するとともに、夜間などの周囲雑音を考慮してさらに厳しくすべきである」ことなどを主張しました。 このような激しい意見交換がありましたが、PLC設備小委員会の結論として、「15〜30MHzまでの許容値を10dB削減する」ことが決定されました。 なお、この決定については、第488回理事会(7月15日、16日開催)において報告し了解されているものです。 PLCの動向については、今後ともその動向には十分注意していかなければなりません。PLC推進側にとって、今回の結論は厳しい値となっており、さらに緩和への要望が出てくるものと思われます。また、国際的な動きとして「国際無線障害特別委員会(CISPR)」においてもPLCの規格について審議が再開されます。国際的な規格が今回の規格を上回ることは絶対避けねばなりません。このためにも、今回の厳しい結論は一つの大きな成果であり、今後の国際会議(CISPR)においても反映していかなければなりません。 また、JARLとしては、このためにもさらに現在審議されている規格のPLCモデムが出た時点で、実際のモデムを使用して漏えい電界強度の測定の実験を行うことにより、アマチュア無線に与える影響について検証をおこない、その結果についてお知らせしていく所存でおりますので会員の皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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