電力線搬送通信(PLC)問題について 実験報告と受信音声 |
JARLでは「電力線搬送通信」(PLC)が,短波帯通信に対して悪影響を与えると判断し,各方面でその旨アピールをおこなっています。
さきにもご案内しましたが,総務省では「電力線搬送通信設備に関する研究会」を設け2つのワーキングループ(以下WG)を設置して,電力線搬送通信が短波帯通信に与える影響に関する実験・研究,会合を実施しています。
7月末までに次表のとおり会合を実施しました。
4月30日 |
電力線搬送通信設備に関する研究会第1回
(ヒアリングWG第1回) |
5月16日 |
ヒアリングWG第2回 |
5月22日 |
実環境実験WG第1回 |
5月23日 |
ヒアリングWG第3回 |
5月27日 |
ヒアリングWG第4回 |
5月30日 |
ヒアリングWG第5回 |
6月6日 |
電力線搬送通信設備に関する研究会第2回 |
ヒアリングWG第6回 |
実環境実験WG第2回 |
6月14日 |
電力線搬送通信設備に関する研究会第3回 |
6月18日 |
実環境実験WG実験(建屋1) |
6月20〜21日 |
実環境実験WG実験(建屋2) |
6月24〜27日 |
実環境実験WG実験(集合住宅) |
7月1〜4日 |
実環境実験WG実験(一戸建て住宅) |
7月9日 |
実環境実験WG第3回 |
7月16日 |
電力線搬送通信設備に関する研究会第4回 |
7月22日〜24日 |
実環境実験WG実験(実規模仮設設備実験) |
7月26日 |
実環境実験WG 第4回 |
7月31日 |
電力線搬送通信設備に関する研究会 第5回 |
ヒアリングWGにおいては,短波帯の利用者やPLC関連団体などのヒアリングが実施されています。第1回の会合では(社)電波産業会(ARIB)とJARLのヒアリングも実施されました。
実環境実験WGにはJARLも参加,6月中旬から7月末に渡り電力線搬送通信設備を実際の利用環境に近い形で仮設して,ハードな日程をこなしながら実験をおこないました。
■実環境実験の概要■
実環境実験は「一戸建て住宅」「集合住宅」「建屋1」「建屋2」「電波暗室」「実規模仮設設備」の6種類について実施。実験は一般の住宅などを使っておこなわれたため,詳細な実験場所は非公開となっています。
JARLは実施された実験のうち「一戸建て住宅」「集合住宅」「実規模仮設設備」の実験に参加し,短波帯への影響についてのデータを取得しました。また,「建屋1」「建屋2」の実験は,実環境実験WGの構成員として見学参加しました。
JARLが参加した実験の結果の概要は次のとおりです。
(1)集合住宅での実験
1階の電気室と2階の部屋に設置した,PLCモデムからの漏洩雑音を確認。部屋から3m離れた地点では漏洩雑音によって,短波放送(ラジオたんぱ6/9MHz,電界強度約30dBμV/m)が全く聞き取れないほどの大きな妨害を与えていました。
(2)一戸建て住宅での実験
約40m離れた電柱の下にPLCモデムを設置し,地上高10mの低圧配電線を一戸建て住宅に引き込んで,宅内PLCモデムに接続しました。この実験では,300m離れた地点においても短波放送受信への悪影響が見られました。
(3)建屋での実験
建屋1の実験は,PLCのノイズが屋内での短波放送の受信に対して与える悪影響を確認しました。
建屋2の実験場所については,関係者以外非公開となっていましたが,実験の当日,自宅で短波帯をモニターして雑音がいつもより多いことに気がついたJARL電磁環境委員会芳野委員長(JA1XF)が,八木アンテナで方向を調べてみた雑音源と思われる付近(受信地点から約600m)を歩いてみたところに実験場所を発見。この結果,指向性アンテナを使用した短波帯の受信をする場合,約600m離れた地点でもPLCのノイズの影響を受けることが判明しました。
(4)実規模仮設設備
木造モルタル作りのモデルハウスに複数台のPLCモデムを設置し,漏洩電磁回を測定しました。JARLは仮設建屋から156m離れた地点に測定ポイントを設け,短波放送への影響調査を行いました。
また,モデルハウス周辺のモデム漏洩信号の到達範囲を短波ラジオで調査した結果,400m以上の距離でも確認できました。
「実験で得られた音声データ」
1.はじめに
総務省「電力線搬送通信設備に関する研究会」実環境実験ワーキンググループの実施した実環境実験で(社)日本アマチュア無線連盟(以下,JARL)が収録した受信音声データのダイジェストを公開いたします。
受信音声は,供試受信機の音声出力をDAT(SONY TCD-D10)の右チャネルに,受信状況などのナレーションを左チャネルに入力して録音しました。
PCへの取り込みは,マスターテープ(DAT)のアナログ再生出力をSibanobuさん(sibanobu@nifty.com)が作成したフリーウェア WavRec Ver1.53.58 によりおこないました。
取り込み時のサンプリングレートなどは44.1kHz/16bit/stereoです。
取り込んだwavファイルは名古屋大学の坂野秀樹さんが作成されたフリーウェアspwave version 0.6.8(Windows版)により分割・切出しなどの作業をおこない,総務省「電力線搬送通信設備に関する研究会」および同研究会実環境実験ワーキンググループに提出されました。
ここに提供した音声ファイルは,研究会と実環境実験ワーキンググループにおいて公開された音楽CDの内容をMP3に変換したものです。ただし,ナレーション情報は割愛しています。
この音声ファイルの全内容の著作権はJARLおよびJARL電磁環境委員会が有しています。再配布は禁止します。
2.集合住宅
(1) 261015SS10_6055.mp3 (492KB)
2002年6月26日1015JSTより録音したラジオたんぱ(6.055MHz)の受信状況
モデムはSS方式,受信地点は第10地点
ラジオたんぱの受信電界強度は28〜42dBμV/m(平均36dBμV/m)
(2) 261024SS10_9595.mp3 (477KB)
2002年6月26日1024JSTより録音したラジオたんぱ(9.595MHz)の受信状況
モデムはSS方式,受信地点は第10地点
ラジオたんぱの受信電界強度は26〜37dBμV/m(平均34dBμV/m)
(3) 261506OFDM10_6055.mp3 (469KB)
2002年6月26日1506JSTより録音したラジオたんぱ(6.055MHz)の受信状況
モデムはOFDM方式,受信地点は第10地点.ラジオたんぱの受信電界強度は平均35dBμV/m
フェージングの谷では完全にマスクされていることがわかります
(4) 261527OFDM10_6060.mp3(507KB)
2002年6月26日1506JSTより録音したモデムキャリア(6.060MHz付近)の受信状況
モデムはOFDM方式,受信地点は第10地点
モデムキャリアの受信電界強度は17dBμV/m
注記
このデータを取得した「集合住宅実験」においては,モデムの信号監視のために線路上にカップラが挿入されていました。
このカップラーによる漏洩電磁界の損失は約10dB以上あるものと考えられますので,実際の運用状況下ではモデムのノイズはさらに大きくなります。
この件に関しては,2002年7月9日に開催された実環境実験ワーキンググループ(第3回)においても取り上げられていて,JARLの計測(戸建住宅)では16dBの差があることが述べられました。
3.一戸建住宅
(1) 021150ss01_6055.mp3 (319KB)
2002年7月2日1150JSTに録音したラジオ短波(6.055MHz)の受信状況。 受信地点は No.1 配電線からの水平離隔距離10m地点。モデムはSS方式。ラジオたんぱの受信電界強度は平均28dBμV/m
(2) 021311ss03_6055.mp3 (326KB)
2002年7月2日1311JSTに録音したラジオ短波(6.055MHz)の受信状況。 受信地点は No.3 配電線からの水平離隔距離3m地点。モデムはSS方式。ラジオたんぱの受信電界強度は平均30dBμV/m
(3) 031009OFDMcarr03_1504.mp3 (326KB)
2002年7月3日1009JSTに録音したOFDM方式のモデムキャリア(15.040MHz)。 受信地点は No.3 配電線からの水平離隔距離3m地点。受信電界強度は平均35dBμV/m
(4) 031111OFDM03_6055 (329KB)
2002年7月3日1111JSTに録音したラジオ短波(6.055MHz)の受信状況。 受信地点は No.3 配電線からの水平離隔距離3m地点。モデムはOFDM方式。ラジオたんぱの受信電界強度は平均19dBμV/m
(5) 031609OFDMSG03_15040.mp3 (320KB)
2002年7月3日1609JSTに録音したSG(15.040MHz)の受信状況。 受信地点は No.3 配電線からの水平離隔距離3m地点。モデムはOFDM方式。SGの受信電界強度は40dBμV/m、SGの変調は1kHz、30%
(6) 031701SSSG03_15050.mp3 (301KB)
2002年7月3日1701JSTに録音したSG(15.050MHz)の受信状況。 受信地点は No.3 配電線からの水平離隔距離3m地点。モデムはSS方式。SGの受信電界強度は40dBμV/m、SGの変調は1kHz、30%
4.実規模仮設設備
(1) 231503NON12000.mp3 (526KB)
2002年7月23日1503JSTに録音した12MHzの受信状況。 モデムはSS方式。モデムON」からOFFへの切り替え。受信地点はモデルハウスから156m地点
(2) 231136ALL6055.mp3 (783KB)
2002年7月23日1136JSTに録音したラジオたんぱ(6.055MHz)の受信状況。 6種類のモデム同時運用から全モデムOFFへの切り替え。受信地点はモデルハウスから156m地点
|