平成19年1月15日掲載

第3回 JARL NEWS2007年冬号掲載分

第2回 JARL NEWS2006年秋号掲載分

第1回 JARL NEWS2006年夏号掲載分


公益法人制度改革について(3)【JARL NEWS2007年冬号掲載分】

 公益法人制度改革については、シリーズで第1回目は公益法人改革の概要等を、第2回目では公益法人改革関連法の概要とJARLに対する影響を記載いたしましたが、今回の第3回目ではJARLはなぜ公益社団法人の認定を受けようとしているかを記載します。JARLは現在民法の規定に基づく「公益法人」ですが、公益法人改革法による認定を受けた場合には、紛らわしいのですが「公益社団法人」との名称になります。

 まず、次の「公益社団法人の認定(以下、単に「認定」と記載します)を受けなかった場合と受けた場合の評価の表」をご覧ください。認定を受けなかった場合については上段に、認定を受けた場合の下段に記載し、メリットは左側に、デメリットは右側に記載してあります。

<表>JARLが公益法人の認定を受けなかった場合と受けた場合の評価

区分メリットデメリット
認定を受けなかった場合
  1. 活動の制限がなく身軽である。
    (1)何をするもの自由である。
    (2)どこからも監督を受けない。
  2. 非違行為を生じてもさほど非難されない。
  1. 社会的信頼面で不利となる。
    (1)会員募集が難しくなる。
    (2)各種契約行為が難しくなる。
    (3)総務省に対する各種要望が困難となる。
    (4)総務省が開催する委員会等に委員として参加できない。
    (5)将来周波数の共用、削減がおこなわれるかもしれない。
    (6)各種情報の入手が困難になる。
  2. 税制の優遇措置が受けられない(課税される)。
  3. JARLが保有する財産をどこかに贈与しなければならない。
認定を受けた場合
  1. 社会的信頼面で有利。
    (1)公益法人であり会員募集が難しくはない。
    (2)各種契約行為が楽となる。
    (3)総務省に対する各種要望を提出することができる。
    (4)総務省が開催する委員会等に委員として参加することができ意見を言える。
    (5)混信の排除をはじめアマチュア局用周波数の擁護が図られる。
    (6)各種情報を入手しやすい。
  2. 税制の優遇措置が受けられる(課税されない)。
  3. JARLが保有する財産をそのまま保有できる。
  1. 活動上に法令上の種々の制限や義務が課せられる。
    (1)公益法人改革関連法への完全適合が求められる。
    (2)公益認定等委員会の監督を受ける。
  2. 公益法人としての規律が求められ、非違行為を起こせば社会から厳しくとがめられる。

 「認定を受けない」ということは、一般社団法人、NPO法人、任意団体、民間会社組織などになることを意味し、「認定を受ける」ということは公益社団法人となることを意味するわけですが、ご覧いただきますとおり、それぞれにメリットやデメリットが出てきます。

 まず、認定を受けなかった場合のメリットとしては、何ら活動上の制約を受けることがないことから気軽であると言えますが、デメリットが非常に大きくなります。
 たとえば、社会的信頼面で不利となりますので、JARLという団体はどのような目的を持ち、どのよう活動をおこなっているかとのことをその都度ご説明し、その理解を賜ることが必要となるため、新規の会員募集が非常に難しくなるほか、各種契約行為もスムーズにできなくなると思われます。そもそも「JARLって何?」、「信頼できる団体?」など疑問視されることでしょう。信頼を得るということは言葉で言うほど生易しいものではありません。

 そして、最も危惧することは総務省に対してさまざまな要望をすることが難しくなり、アマチュア用の周波数の防護等を図ることが困難になるところが出るということです。今日、アマチュア無線用としてたくさんの周波数を獲得し利用することができているのは、とりもなおさずJARLが現在唯一のアマチュア無線に関する公益法人であるが故に実現したものであり、アマチュア局に関する諸手続きの簡素化、資格取得の容易化などの改善措置も、JARLが公益法人であるからこそ、その要望に対して総務省(旧郵政省)もアマチュア無線界の声を真摯に受け止め実現が図られてきたものです。

 その一例として戦後アマチュア局が再開を認められた際には、7MHzでは電信用4波、電話用1波のスポットでしかありませんでしたが、JARLの粘り強い要望の積み重ねが各周波数帯毎のバンドとして認められ、今日の1.8MHzから始まリ10.5GHzまでの多くの周波数帯の割当を獲得することができたのです。現在も135kHzの新規の割当や、3.8MHz帯や7MHz帯などの更なる拡大の要望を続けています。

 アマチュア無線技士の資格取得の容易化に関して言及すれば、再開当初は第1級と第2級の資格しかなく、しかも国家試験しかなかったものが、JARLが強く要望をし続けた結果、昭和33年に電信級(現在の3アマ)や電話級(現在の4アマ)の資格が設けられ、その後資格を簡単に取れるようにと昭和40年に養成課程の制度が設けられたものです。
 養成課程が設けられた当初は電話級標準コースで40時間、電信級標準コースで65時間もの授業時間でしたが、現在では4アマではたったの10時間ですむようになりました。1アマの取得上最も困難だと言われる電気通信術の試験についても和文の試験がなくなりましたし、一昨年からは1アマであっても欧文25字の音響受信だけになり、3アマに至っては音響受信もなくなり法規の試験科目の中でモールス符号の知識を問われるだけになりました。

 また、アマチュア無線を長く続けておられるOMの皆様方は良くご存知でしょうが、昔はアマチュア局の開設申請は極めて煩雑であり、しかも免許されるまでの間に電波監理局(旧電気通信監理局。現在の総合通信局)の職員による落成検査もありましたが、JARLが簡略化を求めた結果、現在のような比較的簡単な方法で開局することができるようになりました。
 アマチュア無線をしておられる方々の中の、JARL会員数の比率は長年約14%程度に留まっていますが、非会員の86%の方々は、会員の方々の会費で運営しているJARLの活動の恩恵を会費なしで受けていることを認識していただきたいものです。

 もし、JARLが今後公益社団法人の認定を受けないとの事態になったら、公益活動をしていると認められていない単なる趣味の一団体ですので、総務省は趣味の団体の話にいちいち耳を傾け、要望に応ずることの可能性はほとんどなくなり、今以上の周波数の獲得も規制緩和などの措置も受けられないどころか、極めて逼迫している各種業務用無線局の周波数需要に応えるために、アマチュア局用周波数が削減されてしまうおそれがあります。
 ことに移動体の通信に最適なV/UHF帯の周波数は業務用無線局側から見れば垂涎の的となっています。たとえ混信妨害が発生したとしても、「たかが遊びのアマチュア無線だから後回し」との事態になってしまうことも考えられます。

 そして、公益社団法人の認定を受けなければ税金との関係が出てきます。現在のJARLは公益法人であり各種収入に対しては非課税ですが、もしも認定を受けずに一般的な団体となった場合には、諸収入に対して40%もの実効税率が課せられ、会費についても40%の課税が課せられる可能性もあります。40%もの課税ともなればたちまち財政面で支障が生じてきます。

 さらに、JARLが公益法人としてこれまでに営々と蓄積してきた数々の資産も公益社団法人の認定を受けなければ類似の公益社団法人や公益財団法人等に寄贈しなければなりません。
 このように公益社団法人の認定を受けなかった場合には、厳しい現実の諸問題が発生してきます。

 次に、認定を受けたとしたら、前述のメリットやデメリットの逆となり、公益社団法人に関する法令上の制限や義務が課されるなどの一定の制約がかかってはきますが、それらは公益社団法人として当然のことであり、それにも増してメリットの方が大きくなると考えます。

 つまり、公益社団法人の認定を受けるということは、内閣府に設けられる「公益認定等委員会」の審査を受け、公益活動をおこない法令に適合している適正な団体と認定されるのですから、言わば政府のお墨付きを得るわけですので、社会的信頼が保たれて種々の活動が容易にできるほか、税制の優遇措置が受けられ、遊休財産とみなされない限り現在の資産をそのまま保有することができるようになります。
 なお、税制優遇に関する法律は、平成19年当初から開会される次期通常国会に提出される予定ですが、公益社団法人は非課税の扱いにする方向での検討が進められている模様です。

 公益社団法人の認定を受けた場合のメリットとしては、周波数防衛や規制緩和要望等のほか総務省の各種研究会、委員会等の場にメンバーとして出席してJARLの意見や考えを発言することができるとのものがあります。
 たとえば現在はアマチュア無線に関する唯一の公益法人として認められているJARLであるからこそ、情報通信審議会の情報通信技術分科会をはじめ各種の研究会に委員として出席でき、電波監理審議会に利害関係者として意見を述べることができているわけで、今後、認定を受けられなければ公的な場で意見を述べる機会を失ってしまいます。
 研究会や委員会にメンバーとして加わるべきで、そのためにも公益社団法人としての認定を受けることが極めて重要ではないかと思います。

 このようにアマチュア無線活動を未来永劫維持し、発展を続けるためには、ぜひとも公益社団法人の認定を受ける必要があると考えております。
 しかし、公益社団法人の認定を受けようとする場合には、公益法人改革三法に完全に適合するよう現在のJARLの定款や活動内容を改めていなかなければならず、会員の皆様方のご理解を得ながら、適切な対応を図っていなかければなりません。
 JARLとして公益社団法人の認定を受ける際に措置しなければならない課題は、次回で紹介します。


公益法人制度改革について(2)【JARL NEWS2006年秋号掲載分】

 前回は、公益法人改革の経緯と概要をお知らせしましたが、今回は、法案の概要とJARLに対する影響等について説明させていただきます。

 今般、公布されました公益法人制度改革に関する法律には、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、「社団・財団法人法」と書きます)」、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」と書きます)」及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」と書きます)」があります。

 まず、「社団・財団法人法」は、これまで民法に定めていた公益法人に関する制度を改め、余剰金の分配を目的としない非営利の社団又は財団はそのおこなう事業の公益性の有無にかかわらず、準則主義(登記)により法人格を取得することができるとの制度を創設したもので、その設立、機関等について定められています。

 次に、「認定法」は、公益法人の設立の許可及びこれに対する監督を主務官庁がおこなう民法に定める制度を改め、内閣総理大臣又は都道府県知事が民間有識者による委員会(「公益法人認定等委員会」と言い、以下「認定委員会」と書きます)の意見に基づき、一般社団法人又は一般財団法人の公益性を認定するとともに、認定を受けた法人の監督をおこなう制度を創設したものです。

 そして「整備法」は、社団・財団法人法及び認定法の施行に伴い、既設の法人の移行手続きを規定し、中間法人法を廃止するほか、民法その他の関連する諸法律の規定を整備したものです。

 この三つの法律は次の内閣府行政改革推進事務局のホームページからご覧いただけます。

http://www.gyoukaku.go.jp/about/index_koueki.html

 これらの法律施行後(平成20年度内の予定)、JARLも含めた既に設立済みの法人は、新法施行後5年間に限り「特例民法法人」と称されてそのまま活動を続けることができますが、新法施行後5年以内に認定委員会の認定を受けて公益法人となるか、一般社団法人や一般財団法人等に移行しなければなりません。もし、認定を受けなければ解散したものとみなされます。

 既設の法人が、新法施行後に公益法人の認定を受けるためには、社団・財団法人法及び認定法で定める諸基準を満たしていることが必要となります。

 JARLは、アマチュア無線の健全なる発展を図り、内外の無線科学並びに文化の向上と発展に寄与するために将来的にも公益法人であるべきと考えており、法律で委任されている政省令が未公布(来年の夏頃の見込み)のため不明ですが、現時点でJARLが関係すると考えられている条文の概要等は、次のとおりです。

■定款変更をして措置しなければならない事項

  1. 公告方法の明示
     社団・財団法人法第11条の規定により公告方法を定款上に明示しなければならない。
  2. 総会の開催・議決要件の変更
     社団・財団法人法第49条第2項に定款変更等の重要事項の総会決議は、「総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上」と規定され、総会の開催方法等を見直さなければならない。
  3. 事業計画・収支予算の決定
     認定法第21条に「毎事業年度開始の日の前日までに当該事業年度の事業計画書、収支予算書を作成し、事務所に備えなければならない。」と規定され、事業計画・収支予算ための総会開催か理事会専決事項とするか決めなくてはならない。

■定款変更をするか、それとも現状のままとするかの選択を必要とする事項

  1. 社員による総会開催召集権の議決権の割合
     社団・財団法人法第37条に社員による総会召集をする際に当該社員が必要とする議決権の割合が「10分の1(5分の1以下の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)」と規定され、その割合の検討を要する。
  2. 総会召集の通知期間
     社団・財団法人法第39条に「社員総会の1週間前までに通知」と規定され、通知期間の検討を要する。
  3. 社員提案権の議決権の割合
     一般社団・財団法人法第43条第2項に社員提案権を「議決権の30分1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあってはその割合)」と規定され、その割合の検討を要する。
  4. 理事会、監事又は会計監査人の配置
     社団・財団法人法第60条第2項に「定款の定めによって理事会、監事又は会計監査人を置くことができる」と規定され、今後も理事会を設置するかの判断を要する。
  5. 監事の任期
     社団・財団法人法第67条に監事の任期に関し「選任後4年。ただし、定款又は社員総会の決議によって選任後2年以内」と規定され、監事の任期の検討を要する。
  6. 代表理事の配置
     社団・財団法人法第77条第1項に「理事は、一般社団法人を代表する。ただし、他に代表理事を定めた場合にはこの限りでない」と規定され、代表理事の設置の検討を要する。
  7. 理事の報酬等の決定方法
     社団・財団法人法第89条に「理事の報酬等は、定款上にその額を定めていないときは、社員総会の決議によって定める」と規定され、理事の報酬等の規定方法の検討を要する。
  8. 議事録への署名又は記名押印方法
     社団・財団法人法第95条第3項に「理事会の議事録は、出席した理事(定款で議事録の署名を代表理事とする旨の定めがある場合は、当該代表理事)及び監事はこれに署名」と規定され、議事録署名人の検討を要する。
  9. 理事等の免除に関する定款の定め
     社団・財団法人法第114条に「役員等が職務をおこなうにつき善意でかつ重大な過失がない場合、理事会の決議によって免除することができる旨を定款で定めることができる」と規定され、免除規定を設けるか否かの検討を要する。
  10. 役員等の解任の訴え
     社団・財団法人法第284条に「総会又は評議員会の日から30日以内に訴えをもって当該役員等の解任を請求することができる。(1)議決権の10分の1以上の議決権を有する社員、(2)評議員」と規定され、評議員制度について検討を要する。
  11. 公告方法
     社団・財団法人法第331条に「公告方法として、次のいずれかを定めることができる。(1)官報、(2)日刊紙、(3)電子公告」と規定され、公告方法の検討を要する。

■今後検討をして、社団・財団法及び認定法に適合するように措置しなければならない事項

  1. 社員名簿の作成、据置き・閲覧等
     社団・財団法人法第31条及び第32条第2項に「社員名簿の作成、据置き、閲覧等」について規定され、社員名簿について検討を要する。
  2. 社員への通知省略のための体制整備
     社団・財団法人法第34条に「通知又は催告が5年以上到達しない場合は、当該社員に対する通知又は催告を要しない」と規定され、郵便物の未到達者の記録作成の検討を要する。
  3. 議決権行使書面の内容等
     社団・財団法人法第41条に議決権を行使するための書面を交付しなければならないと規定され、議決権行使書面の内容の検討を要する。
  4. 議決権の数
     社団・財団法人法第48条に「社員は、各1個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない」と規定され、議決権について検討を要する。
  5. 議決権の代理行使
     社団・財団法人法第50条に「代理人によってその議決権を行使することができる。」と規定され、代理人について検討を要する。
  6. 書面による議決権の行使
     社団・財団法人法第51条に「書面による議決権行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し」と規定され、議決権行使書面の内容の検討を要する。
  7. 貸借対照表等の公告内容
     社団・財団法人法第128条に「(電子公告をする)法人は、5年を経過する日までの間継続して電磁的方法により」と規定され、公告内容等の検討を要する。
  8. 公益認定基準
     認定法第5条各号に公益法人の認定を受ける場合の基準が列挙され、また、同法の別表各号に公益目的事業が列挙されていることから、これら各号に適合するように措置しなければならない。
  9. 理事の報酬基準の作成
     認定法第7条に認定申請をする場合の添付書類等として、理事等の報酬等の支給基準が規定され、その基準の検討を要する。
  10. 公益目的事業比率
     認定法第15条に公益目的事業比率は100分の50以上と規定され、基準に適合していることの立証をしなければならない。
  11. 遊休財産額の保有制限
     認定法第16条に遊休財産額は内閣府令で定める額を超えてはならないと規定され、適合するように措置しなければならない。
  12. 公益目的事業財産の使用又は処分
     認定法第18条に公益目的事業財産の使用又は処分に関する規定が設けられ、適合するように措置しなければならない。
  13. 理事等への報酬支給基準の公表
     認定法第20条に理事等への報酬基準の作成と公表が規定され、適合するように措置しなければならない。
  14. 公益社団法人への移行申請
     整備法第44条に特例社団法人の公益法人への移行申請について規定され、何時の時点で移行(認定)申請をおこなうか慎重な検討を要する。
  15. 理事、監事に関する経過措置の確認
     整備法第48条に理事、監事の経過措置が規定され、齟齬(そご)のないよう措置を要する。
  16. 理事の代理行為の委任等に関する経過措置の確認
     整備法第49条に理事の代理行為の委任等に関する経過措置が設けられ、齟齬を来たさないように措置を要する。
  17. 計算書類の項目等の確認
     整備法第60条に特例民法法人に対する計算書類等の作成について規定され、計算書類等の項目等について齟齬を来たさないように措置する必要がある。
  18. 停止条件付き定款変更案の内容
     整備法第102条に公益認定を受ける特例民法法人の停止条件付き定款変更案に公益法人との文字を使うことが特例として認められるため、定款変更案に公益法人との文字を使うことを忘失しないように措置しなければならない。
  19. 認定申請時の添付書類
     整備法第103条第2項に認定申請を受ける時に内閣府令で定める書類を添付しなければならないと規定され、今後制定される内閣府令に適合するようにしなければならない。
  20. 特例民法法人から公益法人移行時の切替え措置
     整備法第107条に認定を受けた特例民法法人の適用法令が規定され、間違わないよう措置しなければならない。


公益法人制度改革について(1)【JARL NEWS2006年夏号掲載分】

「公益法人制度改革」との言葉を既に皆さん方もお聞きになっていると思いますが、これからシリーズで公益法人制度改革の概要、公益法人制度改革に関する法律の概要、今後JARLとして対応しなければならない事項等についてお知らせしてまいります。

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 公益法人制度の抜本的改革は、行政改革の一環として「特殊法人等の改革」、「公務員制度の改革」とともに、平成12年12月に閣議決定された行政改革大綱に端を発しており、その後、平成14年3月に「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」を閣議決定し、公益法人制度について抜本的かつ体系的な見直しをおこなうこととなりました。これに基づき、平成15年6月に、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」を閣議決定し、公益性の有無に関わらず準則(登記)で設立できる非営利法人制度を創設することとするとともに、公益性を有する場合の取扱い等の主要な課題について検討の視点等を明らかにしました。

 そして、平成16年12月に「今後の行政改革の方針」(閣議決定)の中で「公益法人制度改革の基本的枠組み」を具体化し、その基本的仕組みを次のとおりとしました。

  1. 現行の公益法人の設立に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の判断を分離することとし、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に設立できる一般的な非営利法人制度を創設すること。
  2. 各官庁が裁量により公益法人の設立許可等をおこなう主務官庁制を抜本的に見直し、民間有識者からなる委員会の意見に基づき、一般的な非営利法人について目的、事業等の公益性を判断する仕組みを創設すること。

そして、この基本的枠組みに基づき、更に法制化に向けた具体的検討が進められ、

  1. 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(法人の設立、組織、運営及び管理について定めた法律であり、以下、「一般社団・財団法」と書きます)
  2. 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律案(公益事業をおこなう公益法人の認定制度及び公益事業の適正な実施を確保するための法律であり、以下、「認定法」と書きます)
  3. 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(一般社団・財団法及び認定法の施行に伴う関係法律の規定を整備するための法律であり、以下、「整備法」と書きます)。
     の三つの法律案が平成18年度の通常国会に提出され、去る5月25日に成立し、平成20年4月1日から施行される予定です。

 法律が施行されれば、新たに設立しようとする法人の場合は一般社団・財団法で定める要件を満たせば一般社団法人等として登記でき、その後、公益法人を目指すなら認定法で定める基準を満たしていることの内閣府に設置される「公益認定等委員会」の認定を受けてはじめて公益法人となることができるのですが、JARLも含め既に設立済みの民法第34条の規定による社団法人は、次のとおり取り扱われることとなります。

  1. 新法施行の日において、一般社団法人として存続する。
  2. 1により存続する一般社団法人であって、公益法人への移行の登記をしていないものを「特例社団法人」と言い、特例財団法人と合せて「特例民法法人」と総称する。
  3. 特例民法法人は、新法施行の日から起算して5年を経過する日までの間(これを「移行期間」という)に公益性の認定の申請又は公益性の認定を受けない通常の「一般社団法人」への移行の認可の申請ができる。
  4. 移行期間中に公益性の認定又は移行の認定を受けていない場合は、移行期間満了の日をもって解散したものとみなされる。
  5. 公益性の認定の申請をする際には、行政庁に対して申請書とともに定款変更の案(定款の変更について必要な手続きを経ているものに限る)、事業計画、収支予算、財産目録、貸借対照表などを提出しなければならない。
  6. 認定申請書が行政庁に提出された際には、行政庁の長の意見を付して内閣府の「公益認定等委員会」に諮問され、一般社団・財団法及び認定法で定める規定や認定基準を満たしているかどうかの審査をおこない同委員会の答申により行政庁が認可等の処分をおこなう。

 このように新法施行後5年間は、特例社団法人(若しくは「特例民法法人」)としてそのまま活動を続けることができますが、5年間の移行期間内に、新法による公益法人の認定を受けない場合には一般社団法人に移行、NPO法人に移行、会社化、単なる集合団体、あるいは解散のいずれかの途を選択しなければなりません。公益法人以外とした場合には、保有する財産を同等の公益法人等に寄附しなければなりませんし、社会的信用を失い、また、税制上の優遇措置も受けられなくなる可能性があります。

 JARLは我が国唯一のアマチュア無線に関する団体であり、将来もアマチュア無線の発展を支え快適なアマチュア無線の世界を維持していくためには、公益法人の認定を受け公益法人として活動をしていくことがぜひとも必要であると考えておりますので、公益法人改革の動静に注目しつつ適切な対応をしていきたいと考えております。

 次回は、法案の概要とJARLに対する影響等について説明させていただきます。