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依佐美送信所記念館(愛知県刈谷市)で、ARISSスクールコンタクトを実施
2014年10月9日、愛知県刈谷市の依佐美送信所記念館で、ARISSスクールコンタクトが実施され、NPO法人空とロケット団(鈴木勇雄代表)の活動に参加している、子供たちが国際宇宙ステーションに長期滞在中のグレゴリー・リード・ワイズマン宇宙飛行士(KF5LKT)との交信に成功しました。
空とロケット団は、モデルロケットの製作・打ち上げイベントや、著名人によるロケットや宇宙を題材にした講演会等のイベントを企画開催し、参加する子供たちの宇宙や科学に関するより一層の興味を引き出すことを目的として活動しているNPO法人で、刈谷市と安城市を中心に活動しています。
また、今回スクールコンタクトの会場となった依佐美送信所記念館は、戦前から戦後の長きに渡り、長波帯の大電力無線通信施設としてヨーロッパ諸国との通信や、対潜水艦の通信等に活躍した「依佐美送信所」の貴重な関連資料等を保存する施設で、日本の無線通信の歴史の一つを物語る記念施設でのスクールコンタクトとなりました。
空とロケット団の鈴木勇雄代表に、今回のスクールコンタクトの企画・準備から実施に至る詳細なレポートをお送りいただきましたのでご紹介いたします。
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特定非営利活動法人空とロケット団「ARISSコンタクト in 刈谷」
宇宙飛行士に呼びかけてみよう!
− 依佐美送信所から平和のメッセージを発信 −
【宇宙飛行士に呼びかけてみよう!】
私たちは愛知県刈谷市内外の社会人を中心としたNPO団体であり、これまでモデルロケットを使った科学実験を小・中・高校で実施してまいりましたが、今回選抜されたアタッカー(コンタクト参加者)はこれまでに空とロケット団のイベントに参加してくれた子ども達から募集を募り、当時小学3年生から6年生の合計17名がアタッカーとして認定されました。
【依佐美送信所記念館での開催】
私たちの郷土にはかつて依佐美送信所という日本で最初にヨーロッパと交信をおこなった長波送信所がありました。この送信所は1929年から1993年まで運用され、高さ250メートルの鉄塔が合計8基、そびえ立つ姿は壮観で刈谷市外からでも見ることができました。
今では鉄塔や建物は撤去され依佐美送信所記念館として整備され、当時使われていた通信設備が展示されており、当時苦労して通信をしたことを偲ばせる遺構がたくさんあります。
それらの設備は木材で作られているものも多く館内を埋め尽くすほど大きな設備がいくつもあり、今回コンタクトに使用されるRIGやアンテナと比べると比較にならないほどの違いがあります。
この歴史ある場所でコンタクトがおこなえることに悠久のロマンを感じます。
今回ARISSスクールコンタクトを刈谷市で行うにあたり、ぜひともこの依佐美送信所記念館でおこないたい想いで調整を進めてまいりました。
おかげさまで刈谷市担当部局、依佐美送信所記念館ガイドボランティアの会その他の皆様のご協力によりこの地での開催が可能となりました。
【アタッカーの訓練】
アタッカーの訓練については、地域の枠を越えたアタッカーの取りまとめに加え、質問の英文化など慣れない部分が多いため、市内の小学校の先生や翻訳をお仕事とされている方々にご協力をいただき平成25年12月より合計4回の訓練をおこないました。
訓練のはじめに、「このコンタクトは全員が交信できるとは限りません、でも全員で力を合わせて一人でも多く交信ができればコンタクトは成功で、その成功はみんなのものです」とこのプロジェクトの趣旨を伝えました。
最初は無線のしくみやトランシーバーを使っての無線機の操作、本番に向けての集団行動などの訓練をおこないましたが、3回目以降は英語の訓練が加わります。
英語による自己紹介や自分で考えた質問の英文化など、ハードルの高いカリキュラムにも挑戦しました。この時点では質問の順番がまだ決まっていません。
次回のリハーサルまでに英語を練習し上手に発音できるアタッカーから順に順番を決定することを伝え、英語の質問を上手に喋れることを宿題にしました。
【機材等の準備】
無線機やアンテナ、ケーブル等様々な機材の準備が必要ですが、デンソー技術会ワイヤレス通信技術研究会、デンソーとびものサロン、デンソー幸田アマチュア無線クラブ(JF2ZPA)、アンデン(株)アマチュア無線部のご協力により構築することができました。
依佐美送信所記念館でコンタクトをおこなうにあたり建物の構造上、屋上への設置ができず舞台よりケーブル長にして100m離れた場所にアンテナを設置することとなりましたが、10名を超える方々の協力により無事に設置が完了する見込みとなりました。
【リハーサル・開催日連絡】
コンタクト日程が未定でしたが、事前に取り決めてあるスケジュールに従い、平成26年4月にコンタクト会場である依佐美送信所記念館にてリハーサルをおこないました。
ここで宿題になっていた英語の質問について、ひとりひとり発表をしてもらい順番を決定するのですが、全員甲乙を付けることができないくらい上手になっており、仕方なく(事前に準備していた)あみだくじで順番を決定しました。
ここで運営上の問題点がたくさん出てきます。なぜならここは講堂ではなく、舞台、来場者スペースが限られており、ステージと観客席が同じ高さであるためアタッカーのようすが見えづらく、また電源や照明が不足しているためこのようなイベントに適していなかったのです。
このような状況でしたが、(株)スポーツマネージメント様、(有)ニュープラント様、のご協力により立派な会場を準備することができました。
8月14日、ARISS運用委員会より平成26年10月第2週で実施予定との知らせを受けアタッカー並びに関係者へ連絡をおこない、9月27日に最終リハーサルを実施し本番に向けて緊張が高まります。
9月30日コンタクト日時が正式に決定され、アタッカー及び関係者に連絡しましたが、残念ながら1名のアタッカーが修学旅行と重なったため参加できないとの連絡を受け、最初に質問するアタッカーが代わりに質問することとなりました。前日に無線設備、舞台、スクリーン、音響装置を組み付け本番を迎えることとなりました。
【コンタクト本番】
10月9日待ちに待ったARISSスクールコンタクトがいよいよ開催されました。
鈴木直樹刈谷副市長、刈谷市教育委員会太田武司教育長、総務省東海総合通信局陸上課服部達明氏、中京大学電気電子工学科磯 直行教授はじめ多くの来賓をお招きし、交信開始の60分前からオープニングセレモニーをおこないました。
いよいよISSとの交信をおこなう時刻となりました。アタッカー、見学者全員でカウントダウン「3、2、1、0!」、JST17時55分、臨時に開設した社団局8J2YSM(YSMは会場のYoSaMiにちなんで命名したサフィックスです)のコントロールオペレーターを務める高木信友さん(JQ2VBC)から、国際宇宙ステーションのリード・ワイズマン宇宙飛行士の呼び出しを始めましたが、なかなか応答がありません。もう一度、さらにもう一度呼び出しをしました。
すると、かすかに音声が聞こえました。「やった!」と全員が静かにガッツポーズで応えます。国際宇宙ステーションからの声はだんだんと明瞭に聞こえてきました。
コントロールオペレーターの高木さんからアタッカーにハンドマイクロホンが渡されました。2番目のアタッカーが質問したところでいったん交信が途絶えました。周りで見守るスタッフは一瞬落胆しましたが、交信が回復し次々と順番に質問と回答を繰り返しました。
最後のアタッカーまで無事に交信ができることを祈りながら14番目のアタッカーにマイクロホンが渡され質問を開始しましたが返答がありません。
ここで残念ながら交信は終了してしまいました。
交信内容を翻訳している間、記録映像用にアタッカーのインタビューを収録し、交信内容の解説をおこないました。
その後ARISSスクールコンタクト認定証を授与するのですが、14番目以降のアタッカーに「次は質問者ではなく回答者になってね」と励ましの歓声が聞こえてきました。
【最後に】
今回、「ARISSコンタクトin刈谷-宇宙飛行士に呼びかけてみよう!-」を開催するにあたり、みなさんから多大なるご協力を頂戴いたしましたことをこの場を借りて心よりお礼を申し上げます。
また、参加していただきましたアタッカーのみなさん、これまでよく頑張って訓練し本番を迎えられたことが今後の良い思い出となり、さらなるステージに挑戦されることを期待いたしております。
(詳細レポート:NPO法人空とロケット団・鈴木勇雄代表)
(10月15日第一報掲載)
(10月20日更新、詳細レポートを掲載)
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