■
南極昭和基地8J1RLが5月6日、ゴールデンウイーク期間の特別運用を実施……JA1RL特別公開運用で参加者9名全員が8J1RLとの交信に成功
南極昭和基地に開設されたJARL南極局8J1RLは、毎年5月のゴールデンウイーク期間中に、日本国内の小・中・高校生を優先して交信をおこなう特別運用を実施しています。
今年は5月6日に実施され、東京都豊島区のJARL事務局に設置されたJARL中央局JA1RLは、この特別運用に併せて、交信スケジュールを組んで8J1RLとの特別公開運用を実施し、9名の小中高校生から参加申込があり当日を迎えることとなりました。
当日、JA1RL運用委員会スタッフが準備を進めるJARL事務局会議室には、16時ごろから申込があった9名の小中高生と保護者の方々が続々と集まりました。
交信スケジュールの定刻が近づき、JA1RL局運用委員会委員長のJG1KTC尾義則JARL会長の挨拶、特別運用を見守りに駆けつけた南極OB会アマチュア無線クラブ会長のJR1FVH小林正幸さんの挨拶(右上の写真)、そしてJA1RL運用委員の7K2GMJ新谷一徳さんから、今回の特別運用の概要説明等がおこなわれスケジュール定刻の17時を待ちました。
●定刻を迎えて
スケジュールQSOの定刻17時を迎えました。新谷運用委員が21MHz帯で8J1RLのコールを開始しました(右の写真)。極めて弱いシグナルながら、ほどなく8J1RLからの応答が確認できました。周期的に発生しているノイズはありましたが、JA1RLからの呼出は確実に南極まで伝わっていたようです。
そして、小中高校生たちの交信がスタートしました。今回集まってくれた参加者は、すべて3アマ以上の免許を持っているので50Wでの運用です。
交信開始後、たいへん弱かった8J1RLからのシグナルレベルですが、順番に一人一人交信が進んでいくごとに、確実にコンディションが上がっていったのが実感できました。
南極側のオペレーターは女性を含む3名で、たいへんエキサイティングに交信が進みました。
9人目の交信が終了し、新谷運用委員のファイナルの後、尾運用委員長がお礼のメッセージを8J1RLに送って、今年のJA1RLの特別運用は9名が30分以内で交信できるという異例のスピードで無事終了。会場内は歓声と拍手に包まれました。
ちなみにJA1RLのスケジュールQSOの後、8J1RLとの交信に挑戦する多くの局の声を耳にすることもできました。
今回参加してくれた子供たちは、同行の保護者の方々ともども、交信成功の喜びを胸に会場を後にされたようです。
なお、南極昭和基地8J1RLでは、来年以降もこの特別運用を継続して実施していく予定とのことです。
●不確実性もスリリングな楽しみの一つ
JA1RLでは、こどもの日を含むゴールデンウイーク期間の8J1RLとの特別運用をこれまでも長年にわたって実施していますが、たとえスケジュールを組んでいても、電離層伝搬が必須の南極との交信は自然現象に大きく左右されるものです。
昨年の特別運用では、呼出開始の当初は8J1RLのシグナルが非常に弱いながら確認できたのですが、定刻が近づくころから急激にノイズレベルが上がってしまい、21MHz帯ではすでに8J1RLのシグナルが受信できない状態に陥りました。
このとき8J1RL側ではJA1RLが発していた21MHz帯10Wの呼出を十分に確認できていたようで、8J1RLから14MHz帯送信、JA1RLからは21MHz帯送信のクロスバンド運用での交信を試みて、2名の中・高校生がレポート交換に成功しましたが、14MHz帯の状況も急激にクローズとなり、残念ながらその後南極からのシグナルが聞こえてくることはありませんでした。
このとき参加した子供たちは、あらためて南極との距離感を実感して事務局を後にしていました。
通信の世界では衛星中継回線等さまざまなネットワークメディアの確立で、北極や南極など極地の情報も確実に比較的身近に手に入る時代ですが、短波帯の電波を直接飛ばしあって交信するアマチュア無線では、「交信できるかどうか分からない」というチャレンジもスリリングな楽しみの一つなのかもしれません。
(5月8日)
|