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大阪府高石市高石市中央公民館でARISSスクールコンタクト成功
2017年8月13日、大阪府高石市の高石市中央公民館でARISSスクールコンタクトが実施され、公民館に集まった小・中学生たちが、国際宇宙ステーションに長期滞在中のジャック・フィッシャー宇宙飛行士(K2FSH)との交信に成功しました。
このスクールコンタクトは、同公民館の館長のJH3HUR松井 勉さんがプロジェクトリーダーを務めて準備が進められてきたものです。
なお今回のスクールコンタクトの詳細レポートを、松井さんにお送りいただきましたのでご紹介いたします。
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まず皆様ご存知のことと思いますが、ARISSスクールコンタクトはアメリカ航空宇宙局(NASA)が青少年向けに実施している教育プログラムのことで、国際宇宙ステーションに滞在中の宇宙飛行士が勤務時間を割いて全世界の青少年からの質問にアマチュア無線を使って直接答える夢のイベントであり、国際宇宙ステーションとの交信を通じて未来を担う青少年の科学に対する興味を高め、科学技術を身近なものとして感じてもらう事を目的としています。
■取り組みのきっかけ
私は日本国内で第2回目(特例交信では初)、西日本で初めてである2002年8月2日に大阪府池田市の池田市民文化会館で開催されたKANHAMでのARISSスクールコンタクト(右の写真)に参加し、いつかは地元、高石市の子供たちにも体感してもらいたいと考えて、「ARISSスクールコンタクトをぜひ高石市内でも実施しませんか」と情報提供を市教育委員会におこなって参りました。
しかし学校ではスケジュールが多く、また興味を示してくださる先生はおられましたが、手を挙げる学校はありませんでした。
その後、私も教育委員会に所属し社会教育部門で仕事をする環境に変ったので、「では私がやろう」と考え、JR3QHQ田中 透大阪府支部長に相談し助言をいただいて、平成28年7月14日に、このNASAの教育プログラムに応募し、翌29年4月に高石市の小・中学校の校長が集まる校長会で報告、協力をお願いたしました。
翌29年5月に田中大阪府支部長より「8月のお盆時期、高石で実施できるかもしれないが対応できるか?」とのお電話をいただき、「私の部門は学校に比べて自由度が高いのでぜひお願いしたい」と回答、改めて校長会にも支援をお願いしました。
しかしその後、実施スケジュールが定まらないことから、「子供たちを集めて良い」との許可が下りず、募集要項の作成などができる準備は進めていましたが、時間のみが経過する日々でした。
そして7月1日に日本のARISS運営委員の7M3TJZ安田 聖さんから、「実施スケジュールの目処がついた」という連絡を受け、すぐに参加対象者を「小学校4年生から6年生」として、事前に準備していた募集要項の印刷、翌2日、市内の全小学校で募集要項の配布をおこなっていただきました。
しかし、それまで計画していた事前の勉強会や募集期間が十分に確保できない状況下でもありました。
一方、スクールコンタクトのために臨時に開設する社団局(8N3TA)の免許の申請は、田中大阪府支部長に代行していただき申請していただきましたが、臨時に開設する特別な社団局の申請であるため、教育委員会がおこなっている事を証明しなければなりません。
近畿総合通信局に問い合わせをおこなうと、審査基準により「教育委員会が国際宇宙基地に開設されたアマチュア局と通信をおこなうことについて、教育に資するものとして、自ら主催することを証明する書類の添付」という説明を受け、指導を仰ぎ証明書と設置許可書を田中大阪府支部長に託しました。
子供たちの参加申し込み締め切りについては、7月21日往復ハガキ必着としておりました。しかしお盆の時期と重なり、突然の延期なども起こりうるARISSスクールコンタクトの宿命もあって、その後1週間たっても応募が伸びず、急遽、募集範囲を中学校3年生まで広げ、締め切りを「7月21日消印有効」に替えて、市内の中学校でも配布していただきました。
その結果、締め切りギリギリで応募が集まり、また、話を聞き付けた保護者から「小学校3年生はダメなのか?」等の問い合わせもあり、「ご希望されるなら参加してください」とした結果、定員ちょうど予定通りの15名が集まりました。
また、実施までの時間短縮を図るため、往復ハガキには宇宙飛行士に質問したい内容を2問ずつ、あらかじめ書いて応募していただきました。それを事務局で集約、同じ内容の質問や年齢などを考慮し、これも時間短縮のため、質問の順番もあらかじめ事務局で決めました。
その結果22問の質問となり、並行して当選通知の送付と英訳をおこない、なんとか8月6日に第1回目の学習会に漕ぎ付ける事ができました。驚いたことに、子供たちの吸収はとても速く、最後にはマイクを持って英語での質問の練習までおこないました。
しかしここで気付いたことは、初めて無線マイクを持つため、PTTスイッチをちゃんと押せない、また明らかに頭切れや離すのが早い子供たちを散見したことです。
このことから、親指でしっかりPTTスイッチを押せるように、マイクは必ず左手で持つように指導しました。
第2回目の講習は8月13日でしたが、その前の8月9日に「本番が14日に最終決定」との連絡をいただき、急遽参加者全員に連絡、8月13日には模擬無線機を使った実際に近い形での練習をおこなって、何とか2回の講習で本番に間に合わせる事ができました。
またこの日は並行してアンテナの設置もおこないました。
■緊張の実施本番
実施本番の翌8月14日は午後から会場の中央公民館に集まり、アンテナの調整、無線機のテスト等をおこない、いくつか発生したトラブルも優れた技術を持つ、関西ARISSプロジェクトチームスタッフの手で無事解決し本番に備えました。
夕刻から子どもたちは集合、実際の舞台で、電波の出ない模擬装置を使い、事前練習を2回実施し本番を迎えることとしました。
19:00よりセレモニーをスタート、高石市のマスコットキャラの「てんにょん」も登場し、市長の挨拶をへて、この後、観覧者の前で最終リハーサルを予定していました。しかし、ラインの切り替えに時間を要することこと、事前リハーサルが良くできていたこと、最終調整をおこないたいこと等を勘案して最終リハーサルを急遽中止したため、時間に余裕ができ、ゆっくりと準備が進み、子供たちにも余裕ができました。
19:34にカウントダウンが始まり、定刻よりマイク・コントローラーのJL3JRY屋田純喜さんが国際宇宙ステーションをコール、数回コールしたのちISSより応答があり、いよいよ交信がスタートしました。ISSが高石市上空を通過する約10分間、聴衆は無線交信に集中し、ISSのジャック・フィッシャー宇宙飛行士の声と子どもたちの声だけが響く中、予定していた全部で22の質問を無事英語でおこない、回答を得ました。
国際宇宙ステーションに滞在中のジャック・フィッシャー飛行士は、それぞれ子供の名前を呼び返して、質問にていねいに答えてくれました。
子供たちは緊張の中、英語で「地球はどのように見えますか?」などと質問し、ジャック宇宙飛行士は「常に変化していて息をのむほど美しいです。地球でも美しいものが、また違った感じで美しく見えます。毎日新しい目で地球を見ている様に感じます。」などと英語で応答、最後に「ありがとうございました。そして、ぜひ日本に行ってみたいです。日本のことが好きです。日本の文化が大好きで、大学では日本語を専攻しました」と語りました。
そしてその後、日本語で「こんばんわ!」とジャック宇宙飛行士より応答がありました。高石からはそれに対し、「ありがとう!」と日本語で応答しました。すると日本語で「どういたしまして」のジャック宇宙飛行士から応答を受け大拍手の中、交信は無事終わりました。
この日、産経新聞の記者も取材に来館しており、子供たちは記者の質問に顔を輝かせて応えていました。
将来、高石からも宇宙飛行士、科学者が生まれる事を願う一夜となりました。
(レポート:JH3HUR松井 勉さん)
(8月24日)
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