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JARL南極局8J1RL「こどもの日特別運用」
体験運用を含め子どもたち9名全員が28MHz帯で交信に成功!(速報)
南極・昭和基地に開設されたJARL南極局8J1RLと日本国内の小・中・高校生、高専生のアマチュア無線家と優先して交信をおこなう「こどもの日特別運用」が、南極地域観測隊のご協力をいただき、今年も5月5日(日・祝)の「こどもの日」に開催されました。
「こどもの日特別運用」の当日、事前応募で選ばれた小学校4年生から高校・高専3年生までの9名(2アマ2名、3アマ4名、4アマ1名、無資格者2名)とその保護者が、東京都豊島区のJARL本部に集合し、JARL中央局のJA1RLから南極局8J1RLとの交信にチャレンジしました。
9名の中には、アマチュア無線の制度改正で「アマチュア無線の資格を持たない者の体験運用」の条件が大きく緩和されて「体験運用」が可能になったことから、昨年に続けて今年も、無資格者が2名(小学校4年生、6年生)参加。アマチュア無線と、南極・昭和基地との交信を一度に経験する貴重な機会となりました。
15:40、交信会場となったJARL会議室では、JA5SUD 森田耕司JARL会長、JG1DKJ 澤田倉吉JARL東京都支部長(JA1RL運用委員会委員長)の挨拶から会が始まり、JA1RL運用委員会委員、当日集まった子どもたちの自己紹介などがおこなわれました。
続けて、第64次南極地域観測隊として今年3月に帰国されたJH3LSA 中村映文さんから、用意していただいた「1万4千キロメートル離れた南極までの行き方」「昭和基地での生活」「風速18m/sの状況」のビデオ上映とともに、南極・昭和基地での生活やアマチュア無線の運用、南極にはゴキブリや蚊がいないこと、南半球なので太陽が東から昇って西に沈むことなど興味深い話を伺いました。
JA1RL運用委員の7K2GMJ 新谷一徳さんからは、JARL南極局8J1RLとの具体的な交信方法についての説明と「今日はデリンジャー現象(電波障害)の影響で南極との交信が難しいかもしれません」「まずは21MHz帯で。繋がらなかったら28MHz帯へ、さらに状況が回復しなければ14MHz帯へ移ってチャレンジしてみたいと思います」と、お空のコンディションが思わしくないことが告げられました。
▲上段・左から、森田JARL会長、澤田東京都支部長、JA1RL運用委員 神西氏
下段・左から、第64次南極地域観測隊 中村氏、JA1RL運用委員 新谷氏、南極OB会 小林氏
16:40、JA1RL運用委員が21MHz帯SSB(出力50W)で8J1RLの呼び出しを開始。事前の情報でコンデイションが悪いと半ばあきらめムードの中でしたが、DXペディション局を呼ぶ多数の局が広がって出ていたり、DXコンテストの影響などで混信が見られたため、すぐ28MHz帯へ周波数を移しました。
予想とは裏腹に、呼び出してから5分も経たずに50W局の8J1RLらしき信号が聞こえてきました。しかし信号の浮き沈みが激しく、ノイズに埋もれてなかなか交信に至りません。一瞬、シグナルリポートが「55」になり、そのクリアな信号に参加者一同から拍手が沸き起こりました。
16:55、3アマの4名が50W機で8J1RLとの交信をスタート。コンディションの変化をついて時間をかけながら3人まで交信に成功しましたが、4人目で信号が弱くなり、なかなか交信成功に至りません。同軸ケーブルの切替器を取り外して、アンテナと同軸ケーブルを直結するなど、少しでも信号ロスを抑えるべくJA1RL運用委員が奮闘。それでも難しい状況が続きます。
200W機に変更して改めて8J1RLを呼び出したところ、この間にコンディションが上昇したのか、クリアな信号が飛び込んできました。コンディションが変化するかもしれないで、急いで2名の体験運用者と、2アマの2人がチャレンジ。交信に成功しました。念のために、4アマの1名も体験運用で8J1RLと交信できました。
コンディションが変わらない内に、先ほど交信に至らなかった3アマの1名が50W機で再チャレンジして、シグナルリポートとオペレーター名の交換ができました。さらに、体験運用で8J1RLと繋がっていた4アマの1名も、10W機でも南極まで電波が届くかもしれない……という願いを込めて再チャレンジ。
10W機で8J1RLを呼び出すと、ハッキリした信号で返信があり無事に交信成功。参加者一同、歓喜に湧きました。参加者9名全員が自身の資格で南極とのコンタクトに成功した瞬間です。昨年に続き「こどもの日特別運用」において28MHz帯で8J1RLと交信できたことは「サイクル25」上昇期ならではの快挙と言えるでしょう。
最後は、参加者9名全員の交信成功に、8J1RLのオペレーターへ森田JARL会長から謝意が伝えられ、JA1RLとの交信は終了しました。
その後は、4エリア(中国)など各地がオープンしていたため、8J1RLは引き続き28MHz帯で夜遅くまで「こどもの日特別運用」をおこない、多くの子どもたちと交信できた模様です。
会場では、森田JARL会長から参加した子どもたち1名ずつに「交信記念証」が手渡され、駆けつけてくださった南極OB会アマチュア無線クラブ会長のJR1FVH 小林正幸さんから、交信成功をお祝いする挨拶がありました。
交信に成功した子どもたちは、保護者の方と共に笑顔で交信会場を後にしました。
▲レクチャーを受けながらドキドキの交信(左)、最後は「交信記念証」が参加者全員に手渡された
運営にご協力いただきました第65次南極地域観測隊の皆さま、南極OB会の皆さま、関係者の皆さま、報道関係の皆さま、そして暖かく見守ってくださいましたアマチュア無線家の皆さまに厚く御礼申し上げます。
(5月9日)
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