「ふじ3号」デジタル系テレメトリの解読



テレメトリのフレームフォーマット


 「ふじ3号」の運用モードがパケット通信モードのデータ収集モードの時にテレメトリ
は「8J1JCS>BEACON [mm/dd/yy hh:mm:ss],<UI C>」に続き2桁の16進数が10
組みずつ3行で送られてきます。引き続き「8J1JCS BEACON {mm/dd/yy hh:mm:ss
]<UI C>のあとに2桁の16進数が続き,ひとつのテレメトリを構成します。
最初のテレメトリをフレーム0(F0)とよび,続くフレームをフレーム1(F1)と呼びます。
フレーム0とフレーム1の識別は最初の2桁の16進数(下記のテレメトリフォーマット
の00の位置)を2進数に変換して最下位の桁(LSB Bit0)により行います。


8J1JCS>BEACON[mm:dd:yy hh:mm:ss]<UI C> −−−−>フレーム0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29


8J1JCS>BEACON[mm:dd:yy hh:mm:ss]<UI C>−−−−>フレーム1
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29



 上記の例ではテレメトリの項目位置を示すため,00から29までの数字で表しまし
た。


アナログデータの解読


 表1にアナログデータのフレーム出力位置と換算式を示します。この表ではテレメ
トリ項目の次にテレメトリの出力位置とその換算式を示しています。テレメトリの出
力位置は,フレーム0と(F0)とフレーム1(F1)の区別と上記の例で示した位置番
号を示します。また,CWテレメトリの位置番号を括弧内に示しました。換算式はC
Wテレメトリの換算式と同一です。
 出力位置に括弧表示が無いものは,CWテレメトリでは出力されない項目です。
換算式への入力はCWテレメトリと同様に,パケットテレメトリで送られてきた2桁
の16進数を10進数に変換してから換算式を使って求めます。


     項   目 テレメトリ出力位置    換 算 式
GAS−X (地磁気センサーX軸)  F1 12 (3D) nT=N×490.196[nT]
GAS−Z (地磁気センサーZ軸)  F1 13 (3C) nT=N×490.196[nT]
太陽電池発生電力  F0 15 (4A) I=0.009804×N [A]
バッテリ充放電電流  F0 16 (4B) I=(2-N×0.0196) [A]
バッテリ端子電圧  F0 17 (4C) V=0.10761×N [V]
バッテリ中間端子電圧  F0 18 (4D) V=0.04817×N [V]
バス電圧  F0 19 (5A) V=0.09804×N [V]
+5V安定化電圧  F0 20 V=0.02978×N [V]
−5V安定化電圧  F0 21 V=-0.05956×N [V]
+10V安定化電圧  F0 22 V=0.059881×N [V]
JTA出力電力  F0 23 (5B) Pw=6.4997×N-98.0863 [mW]
JTD出力電圧  F0 24 Pw=10^((0.04586×N+21.865)/10) [mW]
バッテリセル温度  F0 25 (6C) T=-0.388375×N+81.883 [℃]
構体温度−1  F0 26 (5C) T=-0.388375×N+81.883 [℃]
構体温度−2  F0 27 (5D) T=-0.388375×N+81.883 [℃]
構体温度−3  F0 28 (6A) T=-0.388375×N+81.883 [℃]
構体温度−4  F0 29 (6B) T=-0.388375×N+81.883 [℃]
エンジニアリングデータ  F1 15 ---
 F1 16
 F1 17
太陽電池パネル温度−1  F1 18 T=2.26778×N-283.67 [℃]
太陽電池パネル温度−2  F1 19 T=2.26778×N-283.67 [℃]
太陽電池パネル温度−3  F1 24 T=2.26778×N-283.67 [℃]
JTD Tr 温度  F1 23 T=-0.388375×N+81.883 [℃]



換算の例

 それでは次のテレメトリから,いくつかの項目を実際の電圧などを求めてみましょう。

8J1JCS>BEACON [mm:dd:yy hh:mm:ss]<UI C>−−−−フレーム0
94 03 03 04 00 06 01 01 00 00
00 00 CE BD D3 08 67 6F 3F 90
A9 51 A7 02 C8 41 90 8F 8E 8F

8J1JCS>BEACON [mm:dd:yy hh:mm:ss]<UI C>−−−−フレーム1
0D 06 00 09 30 00 00 50 00 00
AD 12 00 00 3A 00 00 88 89 88
00 00 00 8A 89 00 00 02 00 00

 バス電圧を求める場合
  1)フレーム0の19の位置の値を16進数から10進数に変換する。
        90−−−>144
  2)変換した値を換算式に代入して計算する。
        V=0.09804*N
        V=0.09804*144
         =14.11776(V)

 +5V安定化電圧を求める
   1)フレーム0の20の位置の値を16進数から10進数に変換する。
        A9−−−>169
   2)変換した値を換算式に代入して計算する。
        V=0.02978*N
        V=0.02978*169
         =5.03282(V)

システムステータスの解読

 パケットテレメトリ項目表(フレーム0)
項目位置 bit      項目    1  0 | 項目位置 bit 項目 sec
00 フレーム識別  フレーム 1  フレーム 0 | 12 衛星時刻 15777216
メインリレー   OFF ON | 8388608
DCM   ON OFF | 4194304
SRAM   ON OFF | 2097152
4* パケット * * | 1048576
5* パケット * * | 524288
JTA   ON OFF | 262144
JTD   ON OFF | 131072
01 地磁気センサー   ON OFF | 13 65536
太陽センサー   ON OFF | 32768
bit2からbit7まで未使用 --- --- | 16384
| 8192
| 4096
| 2048
| 1024
| 512
02 UVC   ON OFF | 14 256
UVCレベル   2  1 | 128
PCU マニュアル オート | 64
3* PCUレベル * * | 32
4* PCUレベル * * | 16
バッテリ充電モード  トリクル フル | 8
バッテリロジック  トリクル フル | 4
未使用 --- --- | 2
03 データ収集モード ON --- | - - - -
データ再生モード ON --- |
パケット通信モード HKデータモード --- |
パケット通信モード データ収集モード --- |
デジトーカモード ON OFF |
デジタル送信機 FMモード --- |
未使用 --- --- |
|


項目位置00のbit4とbit5の解読
            
項目位置 bit5 bit4 システムステータス
00 OFF
1200bps
9600bps



項目位置02のbit4とbit3の解読

項目位置 bit4 bit3 システムステータス
02 PCUレベル−1
PCUレベル−2
PCUレベル−3



パケットテレメトリ項目表(フレーム1)

項目位置 bit 項目
00 フレーム識別 フレーム1 -
エンジニアリングデータ - -
CWテレメトリ ON OFF
エンジニアリングデータ - -



スピン周期を求める
項目位置 bit スピン周期
11
16384sec
8192msec
4096msec
2048msec
1024msec
512msec
256msec
128msec
10 64msec
32msec
16msec
8msec
4msec
2msec
1msec
0.5msec



太陽角を求める
項目位置 bit     太陽角
14 bit0から7まで太陽角データ
太陽角データ更新bit

太陽角データの解読はCWテレメトリと同じです。

テレメトリの換算例

「ふじ3号」の電源系について



 ここで少しアマチュア衛星「ふじ3号」の電源について復習しましょう。電源系の
詳細に付いてはJARL NEWS 1995年4月号でご紹介しましたので参照して
下さい。

UVC(Under Voltage Controller)は蓄電池の端子電圧を監視して,定められた
電圧以下になると送信機などの機器の電源をオフにし,過放電を防止するコント
ローラーです。蓄電池の劣化による特性変化に対応して,カットオフ電圧をコマン
ドによりレベル1からレベル2に変更できます。

PCU(Power Control Unit)は蓄電池の電圧と温度を監視して,フル充電とトリ
クル充電の切り替えを行います。PCUも蓄電池の特性の変化に対応できるよう
に,充電モードの切り替え電圧をコマンドで変更できます。運用の初期はレベル
1,蓄電池の劣化による特性の変化に応じてコマンドによりレベル2,レベル3と
段階的にコマンド局が切り替えます。

衛星を長持ちさせるには蓄電池の適切な管理が求められす。過放電と過充電
は蓄電池のサイクル寿命を著しく減少させます。UVCとPCUはこの重要な任務
を受け持ちます。PCUが電圧と温度を監視してフル充電からトリクル充電に切り
替えの制御信号を送っても,切り替えのリレーが動作しないと蓄電池にダメージ
を与えます。これを防止するために,ステータステレメトリにはバッテリ充電モー
ドとバッテリロジックの二つの項目があります。この二つが異なる充電モードを
示した場合は,コマンド局がPCUを一時的にオフにしてマニュアルで充電モード
を切り替えることがあります。



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