電波障害対策の基礎知識
(ノーマルモードとコモンモード) |
■障害の種類とその原因
アマチュア無線の電波によって電波障害が起きる原因は、大きく分けて次の2種類があります。
- 送信機のスプリアスによるもの
- 送信電波(基本波)によるもの
電波障害の種類と上記の原因別症状を第1表に示します。
送信機のスプリアスによるものは、送信機とアンテナの間にローパスフィルターやバンドパスフィルターを取り付けるなどの対策をおこなえば解決できるので比較的簡単です。
一方、送信電波の基本波によるものは、障害を受けている機器側に対策をおこなわなければ解消できません。このため、障害を受けている機器をお持ちのお宅の協力が必要となります。
<第1表>電波障害の種類・症状・原因の例
障害の種類と症状 |
スプリアス
によるもの |
基本波に
よるもの |
TVI |
特定チャンネルの障害 |
○ |
× |
全チャンネルへの障害 |
× |
○ |
地上デジタル放送への障害 |
△ |
○ |
衛星放送への生涯 |
× |
○ |
BCI |
特定AM放送への障害 |
○ |
× |
全AM放送への障害 |
× |
○ |
特定FM放送への障害 |
○ |
× |
全FM放送への障害 |
× |
○ |
ステレオI
(アンプI) |
オーディオ機器再生時の障害 |
× |
○ |
AM/FMチューナーへの障害 |
BCIと同じ |
BCIと同じ |
外部機器に関係ない障害 |
× |
○ |
電話機への障害(テレホンI) |
× |
○ |
インターホンへの障害 |
× |
○ |
|
<第1図>ノーマルモード(A)
とコモンモード(B)の電流の流れ |
■ノーマルモードとコモンモード
基本波による障害は、障害が起きる機器に流れる電流経路によって、ノーマルモードとコモンモードに分けられます。
ノーマルモードは、第1図(A)のように基本波が外部導線から機器に流れ込み、機器内部の閉回路を経由してもう一方の導体から流出するような場合です。
もう一方のコモンモードは、第1図の(B)のように基本波が外部導体から流れ込み、機器と大地間の浮遊容量や電源ケーブルなどを経由して流出するような場合です。
具体的にテレビのアンテナ端子に取りつけて障害を対策するハイパスフィルターの回路図から見ればノーマルモードとコモンモードの違いがはっきりします。
第2図(A)がノーマルモード用、第2図(B)がコモンモード用のハイパスフィルターの回路図の例です。
<第2図>ノーマルモード(A)とコモンモード(B)のフィルターの回路例
ノーマルモード用は、アンテナ側の同軸ケーブルの外被からフィルターのアースを通じてテレビ側の同軸ケーブルの外被に直結された形になっていますから、コモンモードの障害には効果がありません。
一方、コモンモード用のフィルターは、トランスの原理を応用して入力側と出力側が直流的にカットするようになっているのが特徴です。
ノーマルモードの電流は、比較的容易に減衰するのに比べ、コモンモードの電流は、減衰することなく遠方まで伝搬するので、電灯線などを伝わって広範囲に障害が起きることがあります。このため、基本波による障害の対策は、コモンモードを主体に考えることが大切です。
■コモンモードの対策部品
第1表に示したように、障害別にみると基本波によるものが多くありますから、対策部品もコモンモードに対応したものを選んだ方が良さそうです。
(1)ハイパスフィルター
コモンモード対応と表示された製品が市販されています。 |
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(2)ACラインフィルター
コモンモード対応と表示された製品が市販されています。トロイダル・コアを入手すれば、自作することも可能です。 |
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電波障害への対応は、日頃からトランシーバーやアンテナの点検もさることながら、障害が起きる原因やその対策方法についての知識を習得しておくことが大切です。
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