テレホンI対策の実際(対策の実例)

【ケース1】14MHz帯SSB電波によるテレホンIの対策例

 アマチュア局は500W局で、インターネット接続のため、アナログ回線からISDN回線に変更したところ、自宅のFAXつき電話機に14MHz帯の電波によって障害が発生したというケースです。回線と機器の接続は次図のようになっています。

★対策の手順

  • 障害レベルの確認
     まず、最初に障害がどの程度のレベルなのかを確認しました。持参した携帯電話に機能つき電話機から電話をかけて、14MHz帯で500WのSSB電波を発射してもらうと、SSB特有の「モガ・モガ」という声がはっきりと確認できました。
  • 対策その1:FAX側の対策
     最初の対策は電話機に接続されている回線ケーブルをEMIクランプ(TDK鎧CAT-2032)に4回巻きつけました。また、FAX機能つき電話機のACコードにも同様のEMIクランプに4回巻きつけました
     障害レベル確認のときと同じ方法で電波を発射してもらったところ、障害の程度にはほとんど変化がありませんでした。
  • 対策その2:FAX側の対策強化
     次に対策を強化するため、回線ケーブルおよびACケーブルにさらにEMIクランプで対策して2段としました。これにより、相当障害のレベルを下げることができましたが、まだ完全ではありません。
  • 対策その3:TA/DSU側の対策
     次にISDN回線、DSU(Digital Service Unitの略称で、ISDN回線とデジタル機器を接続する装置)周辺、DSU/TA(Terminal Adapterの略称で、DSUからの信号を端末のインターフェースに変換する装置)から出力されるアナログ回線を対策することにしました。対策2までと同じようにEMIクランプを使ってISDN回線のDSUへの接続部分、DSU/TAから出力されるアナログ回線のDSU接続部分、DSUのACコードを対策しました。
     この結果、14MHz帯では完全に障害を取り除くことができました。次に運用周波数を7MHz帯に切り替え、同じく500W出力で障害の有無を確認したところ、非常に高いレベルで障害が発生していることが確認されました。
  • 対策その4:ACラインの対策
     7MHz以下の低い周波数では、ACラインへの回り込みが比較的多く発生することがありますので、FAX機能つき電話機のACコードへの対策を強化することにしました。
     そこで、ACコンセントを通すことができる大型のトロイダルコア(FT-240#43)を使い、ACコードを10回ほど巻いてテストしてみました。
     この対策が功を奏し、7MHz帯の障害はじっくりと耳を澄まして聞かないと判らないレベルまで落とすことができました。

【解説】

  • 対策は順序をおって
     今回の対策ではまず電話機の周辺から対策し、次にDSUの周辺を対策しました。
     このように、対策をする際は順序をおっておこなわないと、どこに入れたEMIクランプがどの程度の効果があったのかが判らなくなります。
  • 1個でだめなら2個、3個
     EMIクランプなどを使う対策は、1個で効果がない場合は2個、3個と段階をおって追加してみることで効果が現れることがあります。
  • ACラインへの回り込みを疑ってみる
     特に、HF帯の3.5MHz帯や7MHz帯などの低い周波数では、ACラインへの回り込みによって障害が起きているケースが多くあります。

 電話回線への対策は、14MHz帯で解消できたものの、7MHz帯では依然として障害が発生していました。結局、ACラインへの対策を強化したことで解決できました。テレホンIの対策は電話回線だけではなく、電話機のACラインも含めて対策をおこなうことが大切です。

【ケース2】144MHz帯SSBで発生したテレホンIの対策例

 電話機への電波障害(テレホンI)は、比較的送信電力の大きいHF帯や50MHz帯の電波で発生するのが一般的ですが、144MHz帯で利得の高いアンテナを使用しているような場合にも、テレホンIが発生することがありますから注意が必要です。
 144MHz帯で起きたテレホンIをメーカーにお願いした対策例の紹介と、テレホンIの原因と対策について紹介します。

●アマチュア局からメーカー対策の依頼

 アマチュア局からJARLに寄せられた電波障害の状況は次のとおりでした。

  • 運用周波数:144MHz帯
  • 運用モード:SSB
  • 空中線電力:50W
  • アンテナ :多エレメントスタック

 障害の症状はアンテナのビームのフロントが近隣のお宅に向いたとき、そのお宅のFAXつき電話機に音声が混入。今までは障害がなかったが、そのお宅が最近FAXつき電話機に交換したことから障害が発生したというケースです。

●メーカー対策の依頼と対策の結果

 JARL事務局では障害の起こっている電話機メーカーのサービス部門に障害の状況を詳しく説明し、対策をお願いしました。
 さっそくメーカーからアマチュア局に連絡があり、障害の起きているお宅の協力を依頼して、調査対策の日を設定してもらい、約10日後、FAXのサービス担当者の手で障害対策が施されて解決することができました。
 しかし後日、事務局に他のアマチュア局から144MHz帯の電波で、同一機種に対して同様な電波障害が起きているという連絡がありました。

 そこで、前回対策を施してもらったメーカーのサービス担当者に具体的な対策方法をうかがってみました。

 「障害を受けているお宅のNTTの回線には、すでにフィルターを取りつけてあったので、サービス対策用部品として持っている、周波数帯の異なるフィルターを電話機側とローゼット側にそれぞれ挿入して親機の障害を解決しました。子機側に残ったわずかな電波障害は、親機のロッドアンテナを伸ばすことで解決しました」

 この対策例をみると、親機に発生した電波障害は、HF帯や50MHz帯の電波が原因で起こる電波障害とほぼ同様に、回線にフィルターを挿入することなどで対策できるようです。


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