■愛知県瀬戸市立西陵小学校の児童が古川宇宙飛行士と交信に成功
10月18日、愛知県瀬戸市立西陵小学校の16名の児童が、ARISSスクールコン
タクトで国際宇宙ステーションで長期滞在中の古川 聡宇宙飛行士との交信
に成功しました。
東海地方でのスクールコンタクトの実施は6例目で、愛知県内での実施は
5例目となりますが、日本人宇宙飛行士との交信は、2009年7月11日に若田
光一宇宙飛行士と交信に成功した、岐阜県関市立武芸川中学校以来となり
ます。
今回の西陵小学校のスクールコンタクトは、東海地方本部をはじめ、地元
瀬戸市のアマチュア無線家の協力で進められてきました。
このスクールコンタクトのリーダーである、7L1FFN/2磯 直行愛知県
支部長から詳細なレポートをいただくことができましたので、ご紹介いたします。
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■待望の日本人宇宙飛行士との交信に成功
「せともの」で知られる愛知県瀬戸市、その北西部にある瀬戸市立西陵小学校で、
ARISSスクールコンタクトによる日本人宇宙飛行士古川 聡さんとの交信に成功しました。
チャレンジャーの子供たち16名をはじめ、会場に集まった人々は皆、感動の中に包まれました。
愛知県でのARISSスクールコンタクトは、2005年9月の
愛・地球博(愛知万博)会場内の8N2AI
の後、2010年から2011年にかけてシリーズで実施した、
旭学舎(尾張旭市、8N2OA)、
名古屋市立船方小学校(名古屋市、8N2FE)、
豊田こども科学探検隊(豊田市、8N2T)に
続き5回目になります。
■瀬戸市での実施
西陵小学校での実施は、瀬戸市在住のアマチュア無線家 加藤 一さん(JE2XBS)を中心に愛知県支部や東海地方本部のメンバーとともに準備を進めてきたものです。
ARISSスクールコンタクトはNASAの教育プログラムの一つということもあり、実施するには開催地の教育委員会からその活動に対して後援等をいただく必要があり、これがひとつのハードルになっています。
しかし、加藤さんは偶然にも瀬戸市教育委員会のトップである、教育長の大澤義洋先生が小学校の恩師で、今もときどき会って談笑する関係でした。そのことから話はスイスイと進み、瀬戸市内の小学校の一つ、西陵小学校も紹介いただくことができました。西陵小学校は全校生徒約670名、21学級の小学校です。小学校は丘陵地にできた住宅地の真ん中にあり、周囲にマンション等の高い建物がないためARISSスクールコンタクトを実施するには絶好の場所です。
■日本語による交信が決定
2011年7月1日、ARISS運用委員会の安田 聖さん(7M3TJZ)から、10月17日の週にARISSスクールコンタクトが実施できるが可能かどうか、との第一報を受けました。
その日程は、ちょうど古川 聡宇宙飛行士(KE5DAW)が国際宇宙ステーションに搭乗している期間で、日本語による交信ができることを意味しています。
西陵小学校はその時期、運動会シーズンということもあり心配しましたが、西陵小学校の長江保広校長先生から「受けます!」の即答を得て本格的な準備が開始されました。
■事前研修
さっそく、本番までに数回おこなう事前研修について打ち合せるために西陵小学校を訪問しました。
校長先生には申請前から「最近3回の愛知県での実施のように、申請が多いので日本語による交信は難しく、英語に切り替えることもある」とお伝えしていました。
しかし、興奮気味の校長先生から「すでに3年生から6年生までの生徒に説明会を実施し、多数の交信希望生徒から各学年4名合計16名を抽選で決めました。すでに質問も考えてあり英語で練習もしています。準備万端です」との報告をいただきました。
あまりにも話が進んでいたので、「日本語で交信できるんです…」とはなかなか言い出せませんでしたが、最終的に校長先生から「子供たちが英語に触れる良い機会なので、本番は日本語だとしても、しっかり英語を練習してもらいましょう」ということになりました。
本番までの事前研修は4回おこなわれました。
1回目は夏休み中の8月21日(日)に、核融合科学研究所の横山雅之先生指導による宇宙と科学に関する実験をおこないました。実験終了後、校舎内に隠した電波発信源をFMラジオで探すゲーム「電波フォックスハンティング」をおこない電波のふしぎを体験しました(右の写真)。
9月4日(日)と9月24日(土)は英語による交信練習をしっかりおこないました。この頃から研修会場には、地元CATV局が取材に来るようになりました。
10月15日(土)の最終研修会では、本番さながらのリハーサルをおこないました。この日に初めて子供たちに、本番は日本語による交信になることを伝えましたが、あっさりと日本語による交信練習を終えることができました。子供たちの対応力には目を見張るものがあります。
10月2日(日)には若い大学生の力も借りて、小学校屋上にクロス八木アンテナ
の建設をおこないました(右の写真)。
■スクールコンタクト当日
10月18日(火)16時30分から、交信に先立って開会セレモニーがおこなわれました。校長の長江先生、JA2HDE木村時政JARL東海地方本部長、教育長の大澤先生の挨拶に続き、総務省東海総合通信局無線通信部陸上課長の千田信久氏、当日、規正局を運用いただいた電波監理部監視課の皆様、教育委員会関係者ほか多くの来賓をお迎えして盛大におこなわれました。子供たちによる英語での質問の披露もおこなわれました。
そして、予定より少し早くなった17時27分、「挨拶や返事、人との絆を深めて欲しい」という思いから作られた「絆」と書かれたのぼりを前に臨時に開設した社団局8N2SETOから、国際宇宙ステーションの古川 聡宇宙飛行士への呼び出しを始めました。
数回のコールの後、古川宇宙飛行士の声が聞えましたが、「音が途切れています」との返事でしばらく不安定でした。国際宇宙ステーション側では地上からの多くの混信があったのかもしれません。
「こちら宇宙ステーション、良く聞えます」との返事を受けた後、質問を開始し、16人の子どもたちが次々と質問と回答を繰り返しました。
「宇宙ステーションでスポーツはできますか?」との質問に、古川宇宙飛行士からは、「できますよ。ボールはどこまでも飛んでいってしまいます。楽しいスポーツを考えてみてね」などとわかりやすい回答をいただきました。
最後に古川宇宙飛行士から会場の皆さんに「将来にむけて夢を持ち続けて努力をしてください。そうしたらきっとその夢はかないます。夢がかなうのを応援しています」とのメッセージをいただくと、会場に詰め掛けた約400人の来場者から割れんばかりの拍手をいただくうちに交信を終了しました。
交信終了後は、木村東海地方本部長からチャレンジャーの子供たちひとりひとりに、ARISSスクールコンタクト修了証が手渡され、その後はテレビ局や新聞社の取材を受け、子供たちは興奮しながら小学校を後にしました。
交信終了の1時間後には、中継取材に来ていたNHKのニュースで放映され、翌朝の新聞にはカラー写真付きで「宇宙の古川さんと交信」の記事が大きく掲載されました(当日は中日ドラゴンズがリーグ優勝した日だったこともあり、各新聞記事はいつもより小さめの記事でした。Hi!)
今回、日本語によるARISSスクールコンタクトのコントロールオペレータを初めて体験しましたが、日本語だとすべての交信内容がわかってしまうので、無線機の操作や進行をごまかすことができません。その意味で、これまで体験してきた英語での交信以上にとても緊張しました。
また、今回のARISSスクールコンタクトを企画した加藤さんは7月中旬に関東地方への単身赴任となり、週末におこなわれた事前研修には協力いただけたものの、残念なことに平日だった当日は仕事のため交信本番を直接目で見ることができませんでした。
しかし、交信終了直後に教育長の大澤先生から電話があり、「感動したよ。子供たちは貴重な体験ができてとても良かったよ。ありがとう」とのメッセージをいただいたとのことです。成功して本当に良かったです。
■ARISSスクールコンタクト、今後も…。
ARISS運用委員の安田 聖さんによると、8月24日のプログレス補給船44号機の打ち上げ失敗により、次回のソユーズ打ち上げが未定となり、以降のスクールコンタクトは訓練のための交信を除いてすべて延期され再開は未定との情報を得ました。
その意味でも今回のARISSスクールコンタクトでは大変貴重な体験をさせていただきました。子供たちに忘れられない感動や自信を深く刻み込むことができるARISSスクールコンタクトはきっと再開されることと思います。
東海地方本部では、今後も「知的好奇心探求」を合言葉に、この活動を継続していきます。
最後に、ARISSスクールコンタクトの実施に際し、本当に多くの皆様のご協力をいただきました。心よりお礼を申し上げます。
(レポート:7L1FFN/2 磯 直行愛知県支部長)
(10月19日掲載)
(11月4日更新、レポートを追加)
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