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 南極で体験した日食と磁気嵐
昭和基地から見た皆既日食の連続写真
 日本のアマチュア局の皆さんこんにちは。
 南極における日食については、既に日本のテレビや新聞で報道されたことですのでご存じのことと思いますが、昭和基地(8J1RL)とドームふじ観測拠点(8J1RF)で見ることのできた日食の様子についてレポートします。

 昭和基地では、11月24日の午前2時4分頃に97%の日食が見られるということで、多くの隊員が基地のある東オングル島の小高い山に登りました。この時間、昭和基地から見える太陽の角度は非常に低く、南極大陸の陰になってしまうのではないかと思われました。また、数日前から曇りの日が続いていたため天候も心配されましたが、幸いにも当日は素晴らしい快晴に恵まれました。白夜の季節を迎えたばかりの昭和基地周辺は予定の時刻が近づくにつれて徐々に暗くなり、一番太陽がかげった瞬間に、あたりは夕方のようになりました。

 氷点下10℃という気温と、山の上では10m/s以上の風が吹くという厳しい気象条件の中、多くの隊員が滅多に見ることのできない数分間の天体ショーに興奮と深い感動を覚えたのは言うまでもありません。(写真右上:昭和基地で観測できた日食の連続写真。太陽の動きは南半球のため右から左。撮影は地学担当の池田隊員、合成は通信担当の大下隊員)
 この時、日食の瞬間に乾杯しようと思って山の上まで持参した缶ビールが、栓を開ける前に既にシャーベット状になっており、飲み始めて数分後には凍り付いてしまったと言えば、どの位寒かった想像できるのではないでしょうか。
 また、昭和基地から極点方向に1,000km離れたドームふじ観測拠点では、夏が始まったというのにこの時間氷点下54℃という過酷な環境でしたが、素晴らしいダイヤモンドリングを見ることができ、ドームふじで越冬している8人の隊員にとって、遙か南極大陸の地で見ることのできた皆既日食は一生の思い出になったとのことです。(写真下:撮影はドームふじ観測拠点で越冬中の気水圏系担当の藤田隊員)

 さて、太陽が引き起こす現象の一つとして、この一ヶ月間昭和基地はすさまじい磁気嵐に襲われていました。22回のレポートで10月末に磁気嵐が発生していることをお知らせしたところですが、この原稿を書いている11月26日現在やや持ち直してきているような気配ですが、まだ電離層の状態はいつものように修復されてないように感じられます。
 独立行政法人通信総合研究所の発表によると、今回の一連の太陽フレアは観測史上最大級であったとのことで、こんな磁気嵐は二度と体験できないかもしれません。(もっともアマチュア局としてみれば、あまり歓迎できる現象ではありませんが。)幸い23日には久し振りに18MHzで日本とのパスが短時間オープンし、10数局から呼んでいただき久し振りに聞くJAの信号に何故かホッといたしました。また、それから数時間後には14MHz-RTTYでヨーロッパの局から続けざまに呼ばれ、久し振りのパイルアップに嬉しい悲鳴を上げました。
 その後25日には再び18/14MHzがほぼ同じ時間帯にオープンし、約70局のJA局との交信を楽しみました。また、多少コンディションが良かったので18MHzではSSBでも運用したところ、たくさんの局から日食のテレビ中継を見たということや、もうじき越冬終了を迎えるに当たり激励を頂戴し、隊員一同大変ありがたく感じました。

 10月には800局以上と交信できた秋のコンディションでしたが、11月はやっと200局を超えた程度の局数しか交信できておらず、早く本来のコンディションに戻ることを祈るばかりです。


 【11月27日昭和基地発】

(第44次南極地域観測隊 芝崎)

Tnx 国立極地研究所