磁気嵐後のコンディション
日本のアマチュア局の皆さんこんにちは。南極昭和基地の8J1RLです。
前回のレポートで磁気嵐の影響について触れたところですが、11月下旬には本来の秋から冬のコンディションに戻ったようです。日本での伝搬状況はいかがでしょうか。以下、前回のレポートと一部重複しますが、11月の交信を月初めから振り返ってみたいと思います。日時はすべて昭和基地のローカルタイム(UTC+3h)で表示しています。
11/1
10月から引き続きHFは何も聞こえないので、深夜1時にAO-40でCQ出したところJAから呼ばれる。この時間AO-40は仰角1度以下であったが、遠地点からの戻りの時は調子がいいようだ。
11/2〜6
何も聞こえずノイズばかりの毎日が続き、ワッチが空しくなる。外国の短波放送局さえも聞こえない。
11/7
10日振りに午後からやっとアマチュア局の信号が聞こえてきたので、夕食をはさんで18/14/10MHzのCW/RTTYでCQを出してみる。JAからも数局に呼んでもらえた。ヨーロッパもJAも信号は弱いが磁気嵐も収まったのかなと思えた。20局弱とQSO。
11/8〜9
JAの信号はあまり聞こえなかったが、ヨーロッパはいつもどおり聞こえてくるようになった。20局強とQSO。
11/10〜19
やはり磁気嵐は収まっていなかったようである。この10日間で交信できたのは、わずか2局。毎朝5時に起床して7MHzをワッチしている隊員もいるが気の毒なくらい何も聞こえなかったらしい。後から知ったことですが、観測史上最大の太陽フレアだったとのこと。
11/20
深夜0時過ぎから突然10MHzがオープン。しかしJAの信号は弱くヨーロッパの局につぶされてしまう。DXを中心に約40局とQSO。
11/21
電離層が復活したと思っていたがまだまだ本調子ではない様子。夕方14MHzでヨーロッパの局とRTTYでやっと数局QSOできただけ。
11/23
久し振りに18MHzで日本とのパスが短時間オープンし、10数局から呼んでいただきJAの強力な信号に何故かホッとする。それから数時間後には14MHz-RTTYでヨーロッパの局から続けざまに呼ばれ、久し振りのパイルアップに嬉しい悲鳴を上げた。しかしフェードアウトが早い。
11/25 再び18/14MHzが午後からオープンし、勤務明けの隊員が運用を行い約70局のJA局との交信を楽しむ。18MHzではSSBでも運用し、たくさんの局から日食のテレビ中継を見たという話を聞く。南極に来て良かったと実感する。
11/26 深夜0時過ぎから7MHz-CWにてCQを出す。相変わらずヨーロッパの局からしか呼ばれないが、ローバンドもまずまずの状態に戻ってきたように感じる。
11/27〜29 一日中どこかのバンドがオープンしていて、やっと磁気嵐が去ったのを実感できるコンディションとなった。特に深夜の時間帯に14MHz-RTTYでJAから呼ばれた時にはビックリする。勤務の合間と休日を利用して、三日間でJAとはPSK31を含む各モードで210局余り、DX局とも120局位QSOできた。これで磁気嵐への恨みも晴れた。 また、CQ WWコンテスト中に深夜7MHzをワッチしたが、上から下までWの局がビッシリと並んでいたのは圧巻であった。
11/30
今日もコンディションは良さそうであるが、CQ WWコンテストがまだ行われているのと、勤務の都合で運用できた隊員は少なかった。早朝PSK31でDX局と数局QSO。運用した隊員の話では、信号が安定しノイズさえ無ければSメーターが1〜2程度でもほぼ内容は表示されるとのこと、これから多少PSK31の運用が増えるかもしれないが、英語の平文をパラパラとタイプするのは日本人にとっては簡単ではないとのこと。
さて、これからやっと7〜18MHzのコンディションが安定してくるのを実感できると思いますが、実は南極ではそうも言っていられません。第45次南極地域観測隊がオーストラリアの西海岸にあるフリーマントルに11/29に到着しており、12/3には砕氷艦「しらせ」で南極に向けて出港する予定です。昭和基地では今「しらせ」と45次隊の到着を首を長くして待つと同時に、夏の間だけ使う宿舎や車両の整備、道路や建設工事予定地の除雪に追われています。また、昭和基地のあるリュッツホルム湾はアデリーペンギンの繁殖時期を迎えているため、沿岸地帯にあるルッカリー(営巣地)での個体数調査も急ピッチで進められています。
この原稿を書いている12月1日現在は、日本時間の21時過ぎあたりから18MHzが非常にコンディションがいいようです。昭和基地は午後3時過ぎですので勤務中の隊員が多く短時間しか運用できませんしフェードアウトも早いのですが、44次隊とまだ交信してない方は今がチャンスかもしれません。それでは、44次隊の越冬期間も残り二ヶ月となりましたが、またお空で会いしましょう。
写真下はペンギンの個体数調査で訪れたルッカリーと海氷上の雪上車。このルッカリーでは700羽弱の成鳥が確認された。まだ雛はかえっておらず、卵を暖めている時期。撮影は芝崎。
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