■愛知県尾張旭市の旭学舎の子供たちが国際宇宙ステーションと交信に成功
6月23日22:01、愛知県尾張旭市の旭学舎(あさひまなびや)の活動に参加している子供たちが、国際宇宙ステーションに長期滞在の女性宇宙飛行士のトレーシー・カードウェル・ダイソン宇宙飛行士との交信に成功しました。このスクールコンタクトは国内で46例目ですが、東海地方では3例目、愛知県内では2例目、女性宇宙飛行士との交信は4例目の実施となります。
旭学舎は尾張旭市の生涯学習団体の一つで、青少年の育成を目的として活動をおこなっています。
旭学舎では、「上の学年の子供たちが下の学年の子供たちを指導する」という学習スタイルが守られ「教える楽しみ」と「学ぶ楽しみ」の同時体験を主体とした学習活動のほか、学習の合間には「遊び感覚でさまざまな体験ができる」テーマの課外活動を実施しており、各活動を多数の市民ボランティアによる指導隊の協力でおこなっています。今回のスクールコンタクトも、この課外活動の一環として計画されたもので、東海地方本部のスタッフが、旭学舎のボランティア活動に加わる形で準備が進められてきました。
●「日本語の交信」から「英語の交信」への転換
2008年の春、若田光一宇宙飛行士の国際宇宙ステーション長期滞在が決定し、ARISS Japanでは「日本人宇宙飛行士との日本語による交信」を希望する実施団体の募集を積極的に進めました。その結果、国内のかなり多くの学校や団体等からお申込みをいただきました。
しかし、日本人宇宙飛行士の国際宇宙ステーション長期滞在期間中のARISSスクールコンタクトの実施可能な回数には、自ら限界があります。
若田光一宇宙飛行士・野口聡一宇宙飛行士の運用により、各地で「日本語によるスクールコンタクト」がおこなわれました。すでにARISS Japanに実施申込みがおこなわれている一部の学校や団体分を実施できましたが、「日本語の交信にこだわった学校や団体」の「順番待ちの行列」は、依然として長く続いているのが現状です。
さて旭学舎のスクールコンタクトは、当初「日本人宇宙飛行士との交信」を目標として、ARISS Japanへの申請がおこなわれ準備が進められていたものです。
旭学舎は計画・申込みの当時から「日本語による交信」にこだわりを持ちつつ、長い待ち行列で並び続けていましたが、「日本語にこだわって、これ以上日本語の順番を待ち続けると、子供たちのモチベーションを維持することが難しくなる」という判断から、比較的交信のスケジュールが取りやすい、日本人宇宙飛行士の長期滞在がない期間の「アメリカ人宇宙飛行士との英語の交信」に転換して実施することになりました。
そして「交信の練習」をはじめ、それまでおこなってきた準備の一部は、振り出しからの再スタートとなりました。
今回の旭学舎のスクールコンタクトについて、取りまとめをおこなった、JG2GFX種村一郎さんに、計画から実施に至るまでの詳細なレポートをいただきましたので、ご紹介いたします。
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■旭学舎ARISSスクールコンタクト大成功…日本語から英語に
JARL NEWS2008年秋号の「若田光一宇宙飛行士、野口聡一宇宙飛行士とのスクールコンタクト実施団体の募集」の記事により参加希望を募ったところ、愛知県下で3団体の呼応があり、2009年1月に申請書を提出致しました。
この募集は、「日本人宇宙飛行士による日本語による交信」が最大の美点であり、参加する子供たちはもちろん、スタッフにとっても英語という大きなバリアが取り払われる、願ってもない機会であり、日本人宇宙飛行士との交信を関係者一同楽しみにしておりました。
申請後約1年経過した2009年12月に、ARISS JAPANから「日本語による2010年内の交信は困難で、英語なら2010年6月ごろ実施できる」とのご連絡をいただきました。
我々スタッフは「日本語で交信」を前面にPRして参加者募集を推し進めてきた関係上、「英語でお願いします」とは言い出し難く躊躇していたのですが、ともかく実施して頂くことを優先して、日本語による交信を断念し、「英語による交信」に切り替えていただき早期実現をお願いしました。
そして、ついに5月27日に旭学舎の「スクールコンタクト実施のお知らせ」が届き、6月第4週の実施が決定しました。
旭学舎は愛知県尾張旭市の青少年を対象にした市民活動団体ですが、メンバー以外にも広く市内の小学校にも広報の結果、多くの希望者が集まり、最終的に24名のチャレンジャー(参加者)が決定されました。
さっそく、4回の勉強会スケジュールが作成され、質問の翻訳や中部大学講師のデビッド先生の英語レクチャー、本番さながらのリハーサルなどを経て準備はすっかり整いました。
■23名が交信に成功
6月23日22:01、コントロールオペレーターの7L1FFN磯さんの「NA1SS this is 8N2OA」のコールに、KF5DBFトレーシー宇宙飛行士の美しい声での応答があり、会場の全員が思わず胸を撫で下ろしました。
トレーシーさんの「I'm ready」に続き、次々とチャレンジャーが順調に質問をこなして行きました。
24人目のチャレンジャーの質問後にフェードアウトしてISSからの応答が途切れましたが、実に23名ものチャレンジャーの交信が成功したのです。
当初、「24名もの大多数の交信は到底無理だよ」と思っていたスタッフの危惧を横目に、子供たちはその流暢な英語とPTTを押さずに話すアクシデントも乗り越え見事なオペレーションで無事に成功させたのです。
そして、今回の成功の影にはチャレンジャーの保護者の皆さんの活躍を見逃すことはできません。
勉強会の準備をはじめ事前研究課題についてのチャレンジャーへのアドバイス、CDによる英語質問の家庭学習、そして当日のスタッフとしても大奮闘されました。
■多くの子供たちに貴重な体験をして欲しい
ARISSスクールコンタクトは、スタッフにとって2005年愛知万博8N2AI以来の2度目のコンタクトでした。我々は実施までのプロセスを大切にすると共に成功の緊張感と喜びを子供たちと共有したいと考えています。
この秋には名古屋市立船方小学校に続き豊田市でも実施が予定されています。
今後もこの素晴らしいARISSスクールコンタクトを多くの子供たちに体験して欲しいと願っています。
(レポート:JG2GFX 種村一郎さん)
【参考】JARL NEWS2008年秋号掲載記事(PDF形式、約800kバイト)
- ARISSスクールコンタクト準備から申請・実施まで…その実際(7M3TJZ安田 聖、ARISS運用委員)
- 第18次長期滞在クルー若田光一宇宙飛行士および第20次長期滞在クルー野口聡一宇宙飛行士とのスクールコンタクト実施団体の募集
(7月6日)
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