■名古屋大学のおもしろ科学教室に9回目の出展参加(東海地方本部)
1月9日、国立大学法人名古屋大学東山キャンパス(名古屋市千種区不老町)の「IB電子情報館」で、第9回「おもしろ科学教室」が開催されました。この「おもしろ科学教室」は、毎年成人の日に名古屋大学で開催されている、体験型の青少年向け科学啓発イベントです。
名古屋大学はこれまでに6名のノーベル賞科学者を輩出しています(注1)。「おもしろ科学教室」は、2008年に3名のノーベル賞受賞者が同時に誕生したことを記念して始まったもので、その後も、日本の次世代科学技術を担う青少年の科学啓発のための新年のイベントとして、関連の学会や団体など(注2)が連携して毎年開催され、人気を集めてきました。
JARL東海地方本部も、「遊びと不思議の中から生まれる科学」という体験型の青少年向け科学啓発イベントの趣旨に賛同して、第1回からブースの出展やイベントの実施に協力してきました。
今年の基調講演は、「自動運転でクルマをもっと安心・安全なのりものに」と題した、大手自動車部品メーカー「デンソー」で自動車の自動運転の研究をされている松ヶ谷和沖さんによる、特に近年大いに注目を集めている車の自動運転の技術などに関するたいへん興味深いお話しで、来場の子供たちは興味深げに聴き入っていました。
余談ですが、今回の基調講演の講師の父親である松ヶ谷卓平さんは、JA2TYのコールサインを持つ熱心なアマチュア無線家で、以前JARL三重県支部長を務められた方です。
余談ですが、今回の基調講演の講師の父親である松ヶ谷卓平さんは、JA2TYのコールサインを持つ熱心なアマチュア無線家で、以前JARL三重県支部長を務められた方です。
【注1】名古屋大学にゆかりのあるノーベル賞受賞者
①野依良治博士(2001年、化学賞)、②小林誠博士(2008年、物理学賞)、③益川敏英博士(2008年、物理学賞)、④下村 脩博士(2008年、化学賞)、⑥赤ア 勇博士(2014年、物理学賞)、⑦天野 浩博士(2014年、物理学賞)
▽ノーベル賞受賞者一覧(名古屋大学のWebサイト)
http://jukensei.jimu.nagoya-u.ac.jp/bigname/index.html
【注2】第9回おもしろ科学教室の参加学会・団体
応用物理学会東海支部、電気学会東海支部、電子情報通信学会
東海支部、日本アマチュア無線連盟東海地方本部、日本赤外線学会、プラズマ・核融合学会、レーザー学会中部支部、情報処理学会東海支部、日本弁理士会東海支部、名古屋大学、豊田工業高等専門学校、総務省東海総合通信局、愛知県電波適正利用推進員協議会、愛知県振興部観光局、豊田合成(株)
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■今回もユニークな楽しいイベントがいっぱい!
「おもしろ科学教室」では、各参加学会や団体などが、それぞれの専門とする科学・技術にちなんだ興味深い体験や実験コーナーのブースを出展し、また工作教室(事前申込み制)などのイベントを実施します。たとえば今年おこなわれた工作教室は、
- どこまで飛ぶかな?風船ロケット(応用物理学会の工作教室)
- LED電子万華鏡を作ろう!(日本弁理士会の工作教室)
- 作って考えよう!自分だけの"魔鏡"(日本赤外線学会・レーザー学会中部支部の工作教室)
で、どの教室でも、たいへん熱心に取り組んでいる子供たちの姿が見られました。
数あるブースの中でも特にユニークだったのが、豊田工業高等専門学校の学生たちが出展していた小型サッカーロボットの実演展示のブースです。この展示は昨年から始まったものですが、この「おもしろ科学教室」の事務局の取りまとめ役である井吉明先生(現豊田工業高等専門学校長、名古屋大学名誉教授、応用物理学会東海支部)が、名古屋大学から豊田工業高等専門学へ移られたことが出展のきっかけになっているのかも知れません。
ところで、みなさんはRoboCupという世界的なプロジェクトをご存じでしょうか。RoboCupは、ロボット工学と人工知能の融合・発展のために自律移動ロボットによるサッカーを題材として、日本の研究者らによって提唱されたプロジェクトで、西暦2050年に「サッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律型ロボットのチームを作る」という夢に向かって研究を推進しているものです。現在では、サッカーだけでなく、大規模災害へのロボットの応用としてレスキュー、次世代の技術の担い手を育てるジュニアなどのリーグが組織されています。豊田工業高等専門学校は、このプロジェクトの中の小型リーグ(SSL)の常連出場校として有名な学校で、国際大会で上位入賞した実績もある強豪校なのです。
このブースでは、多くの子供たちが、学生たちの指導で、国際大会でも大活躍した精巧な小型サッカーロボットの操作を大いに楽しんでいました。
■東海地方本部のブースやイベントは?
というように、今年も各学会・団体の特徴が色濃く表れる展示や工作教室がいっぱいですが、JARL東海地方本部では、アマチュア無線に強く関わる団体であるという特徴を生かすため、「身近な遊びの中で気づくモールス通信や電波のおもしろさの体験」をテーマとして、イベントとしては、ゲーム型式で参加してもらえる「電波で鬼ごっこ!キツネを探せ!(FMラジオを使ったFOXハンティング)」と特定小電力無線機を使った「交信体験」を、展示ブースでは「印字機を使ったモールス通信体験」と「公開運用」を実施しました。
モールス通信体験は「自分の名前をモールス符号に書き換えたメモを見ながら、モールス符号を打ってもらい、印字機にプリントする」という簡単なものですが、今年も多くの子供たちが参加し、モールス符号への変換や縦ぶれ電鍵の打ち方を体験していました。
また、公開運用を興味深げに眺めたり、アマチュア無線についての説明に、熱心に耳を傾けたりする子供たちも見られました。イベントの方は、30名の子供たちが2組に分かれて、FOXハンティングと交信体験を交代で参加してくれました。
ブース運営、イベントとも、名古屋大学アマチュア無線研究会(JA2YKA)や中部大学無線部(JA2YEF)、中部大学科学物理実験会(SPE)などからの、多くの大学生メンバーの積極的な協力もあり、賑やかにおこなわれました。
冬の寒さが少々身にしみる当日ではありましたが、FOXハンティングに参加した子供たちは、FMラジオを手に保護者の方を引き連れて、競技会場の広場を楽しそうに駆け巡っていました。
競技終了後、参加した子供たちに聴いてみると、子供たちは口々に「楽しかったよ」と語ってくれました。
■青少年お試し入会キャンペーン[拡大版]のPR
「電波で鬼ごっこ!キツネを探せ!」の表彰式の終了後、記念撮影に移る前に、参加の子供たちと保護者の方々に、アマチュア無線に関する説明とJARLの役割の紹介をして、現在実施中の「青少年お試し入会キャンペーン[拡大版]」のパンフレット(兼入会申込書)を配布しました。今回、東海地方本部のイベントに参加してくださった、多くのご家族や子供たちにご賛同いただき、キャンペーンでJARLにお試し入会していただくことを心より願っています。
余談ですが、今回のイベント運用を手伝ってくれた、名古屋大学や中部大学の学生メンバーたちの中から「私たちもお試し入会の対象なのですよね。このチャンスに個人入会しちゃおうかな?」という声がちらほら聞こえてきたのは、ある意味たいへんうれしいことです。
■「おもしろ科学教室」の今後
「おもしろ科学教室」が次回開催の運びとなれば、記念すべき節目の第10回となります。
開催事務局代表者の井吉明先生(豊田工業高等専門学校長、名古屋大学名誉教授)は、「おもしろ科学教室」の今後の継続的な開催意義について、
『愛知県は、日本のものづくり産業の中心地であり、その地に育つ青少年や保護者の皆様が、科学技術への興味と関心を持ってくれることが大変重要です。このおもしろ科学教室は今年で9年目になりましたが、参加団体も少し出入りはあるものの、ほぼ定着し、毎年、多くのスタッフが協力してくださっています。このおもしろ科学教室を始めた時は、名古屋大学に勤務していましたが、2011年に豊田高専校長として赴任した際、これを続けることができるかどうか、若干、心配でした。しかしながら、電気学会、電子情報通信学会、そしてその後、加わった情報処理学会も含めて、これら学会の幹事の力強い協力や、参加されてきた諸団体のご尽力のおかげで、無事第9回まで続けることができたばかりでなく、サテライトとして豊田高専でもおもしろ科学教室を開催することができました。
来年度は第10回を迎えますので、これまで同様、諸団体の皆様はもちろん、会場となる名古屋大学のご支援も得ながら、ぜひ、新しいさらなる10年間に向けて、おもしろ科学教室を続け、地域の青少年を始め、保護者の皆様に、科学・工学・理学・新技術への興味と関心を高めていただきたいと思います』
と語ってくださいました。
また、以前から同じ応用物理学会のメンバーの一人として、井教授とともに、さまざまな科学啓発イベントの開催にも携わり(注3)、名古屋大学の「おもしろ科学教室」においても、その第1回目から運営に携わってきた岡島茂樹先生(中部大学名誉教授)からは、今後の「おもしろ科学教室」について、
『このような学協会連携のイベントは単独では開けない小さい団体(たとえば、私の日本赤外線学会)でも参加できる利点があります。また、今回手伝ってくれた大学生たちにも良い体験の場を提供できたのではないかと思っています。今後、さらに拡がってゆくことを期待しています。青少年の科学技術啓発を目的としたイベントを開催する時に一番大切なのは、実施者が心から科学・技術、考えることや「ものづくり(実験工作)」などが好きで、子供たちと一緒にワクワク楽しむことです。子供たちにはその姿やその心が伝わります。皆が楽しんでいる光景は明るい将来につながります。また、継続も大切で、9回続けて開いてこられたということは皆でやろうという意気込みがあったからで、大変素晴らしいことだと思っています。また、このようなイベント(同じ時期に同じ会場で開催)では、参加してくれる子供たちの中にはリピーターがたくさんいます。この子供たちは今年何があるのだろうとワクワクして参加してきます。そのワクワク感を大切にすることも大切です。したがって、リピーターを考えた工作や展示を展開する必要があり、マンネリ化は大敵です。その点では、今年の参加者は少なくなったのではないかと危惧しています。多くの学会や団体が連携して開催していますので、得意なものはたくさんあるはずです。次回の10回目を節目として、参加団体の拡充、工作・展示テーマの新鮮さも考えて発展してゆければと期待しています』というご意見をいただきました。
なお、岡島先生には、2005年に日本アマチュア無線連盟が出展した8J2AI愛・地球博特別記念局のブースにおいて実施されたこども向けの工作教室を始めとして、日頃から、JARL東海地方本部の科学啓発活動についてのアドバイスや工作題材のアイデアをいただいています。
余談ですが、岡島先生もアマチュア無線従事者の資格を持っておられ、子供のころは、初の人工衛星スプートニク(注4)の電波を追いかけた電波少年だったそうです。
JARL東海地方本部では、このような体験型科学啓発イベントについて、今後もより積極的に協力していきたいと考えています。
【注3】リフレッシュ理科教室事業
岡島先生や高井先生らは「リフレッシュ理科教室事業による青少年理科教育の普及啓発」(応用物理学会での活動)により、平成19年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞(理解増進部門)」を受賞されています。
▽リフレッシュ理科教室(応用物理学会東海支部)
http://tokai.jsap.or.jp/science-classroom.html
【注4】1957年10月4日、当時のソビエト連邦が「国際地球観測年」(IGY)の最中に打ち上げられた世界初の人工衛星。20MHzと40MHzの2つの送信機を搭載しており、日本の多くのアマチュア無線家もその信号受信に挑戦していました。
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(日本アマチュア無線連盟・東海地方本部)
(1月30日掲載)
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