真空管アンプが登場! 学習研究社が発売している、「大人の科学シリーズ」の電子工作キットのラインナップに11月30日、真空管アンプが加わります。同シリーズは、往年の人気電子教材「電子ブロック」や「マイキット」を復刻させ、真空管ラジオ(Ver.1、Ver.2)をラインナップに加えるなど、アマチュア無線家の間でも注目を集めています。 そして今回、熱心なファンの多い「真空管アンプ」(12,390円、税込)がそのラインナップに加わることとなりました。 上図が「真空管アンプ」の回路図です。部品の定数などは入っていませんが、今回、学習研究社のご厚意で、発売前に公開していただくことができました。 L・Rの各チャンネルに、2本の真空管(1B2、2P3)を採用。計4本の真空管を使用しています。 右の写真の真空管ですが、ともに30年以上前に中国で生産され倉庫に眠っていたものです。 実はこの真空管は、前2作の真空管ラジオキット(Ver.1およびVer.2)の一部に使用されていた球なのです(左が2P3、右が1B2)。
1B2は真空管ラジオVer.1の電圧増幅段に、2P3は真空管ラジオVer.2の電力増幅段に使用されていました。 真空管キットの第1弾の「真空管ラジオ」(Ver.1)の回路は、フロントの再生検波段に高周波増幅用の1K2を使用。また電圧増幅段に低周波増幅用の1B2、スピーカーを駆動する電力増幅用に低周波増幅用の2P2(または3S4)を使用し、いわばセオリー通りの部品の組み合わせで構成されていました。 しかしその後、発売された、「真空管ラジオVer.2」では再生検波段の1K2は共通でしたが、電圧増幅段に1A2、電力増幅段に2P3という前作とは異なる真空管による回路構成が採用されたのです。 学習研究社の担当の方によれば、「真空管ラジオ(Ver.1)の好評を受けて真空管ラジオVer.2の発売が検討された際、電圧増幅段にVer.1で使った1B2のような低周波増幅用の真空管がどうしても見つかりませんでした。そこで、真空管ラジオVer.2では、スペック的には少し無理があるのですが、そのとき入手が可能だった1A2というコンバーター管を低周波の電圧増幅段に採用した経緯があります」とのことです。 「真空管ラジオ」(Ver.1)の好評を受けて始まった、「真空管ラジオVer.2」の製品化には、実はこのような紆余曲折があったのです。 ●新たに見つかった大量の低周波増幅用真空管 さて、「真空管ラジオVer.2」の誕生後、同社には真空管の入手に関する新たな情報がもたらされたそうです。中国国内で、新たに「1B2」や「2P3」の大量の在庫が発見されたのです。 本キットのアンプとしての回路は極めてオーソドックスなものです。電圧増幅段に1B2を配し、電力増幅段に2P3を配した回路が、左右2チャンネル分組まれて構成されています。 出力トランスには、真空管の増幅性能を引き出すために、コア材を吟味した変則EEコアトランス(写真右)を独自開発しています。 また2P3を使った電力増幅回路は5極接続を採用していますが、真空管回路に詳しくハンダごてを活用できる上級者のために、3極接続に改造実験ができるような基板パターンも用意してある模様です。 ●単一電池2本動作のヒミツ 回路図をご覧になって、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、電源は1.5V電池(単一型)を並列に2本。 1B2と2P3は電池管とはいうものの、1.5Vの電源ではA電源(ヒータ電源)を供給するのがせいぜいで、真空管回路に大切なB電源(プレートやグリッド用の直流電源)を供給できません。 ところが、今回の真空管アンプでは、B電源用の電池はなく「電源回路」と記されたブロックがあるのみで、このブロックがポイントなのです。 学習研究社の担当者の方によれば「今回の真空管アンプには本当はAC電源を使いたいと考えたこともあります。しかし当社の大人の科学シリーズは、技術にはそれほど詳しくない方にも組み立てられることをコンセプトとしていますし、AC電源の採用は電気にあまり詳しくない方にとって、感電等の危険を伴う場合もあります。 ▲マルチセルラホーンタイプのフルレンジスピーカー、ポータブルオーディオに接続するコードも付属しています。 今回の真空管アンプは前2作の真空管ラジオと同様、基板上のほとんどのパーツは実装済みで、構造物の組み立て、真空管や電池ボックス、機構部品等の取り付け、端子ピンを使用したワイヤリングが中心の半完成品です。 真空管ラジオでは、ループアンテナ部の巻き線や開閉式バリコンの組み立てなど時間を要する作業が必要でしたが、この真空管アンプでは組み立てに作業時間がかかる要素が少ないことから、手際よく組み立てれば約30分程度で完成できるとのことです。 なお本キットの奏でるサウンドは、高いクオリティーを極めた高級真空管アンプにはとても及びませんが、真空管ならではのレトロな感覚の音が再現されるそうです。
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