WRC-03にて決定された 主なアマチュア無線関連事項 |
145カ国、約2300名が出席して、6月9日からスイス・ジュネーブで約一カ月間にわたって開催された、世界無線通信会議 (WRC-03) には、JARLからも政府代表団の一員として参加いたしましたが、会議は7月4日に終了し、アマチュア無線に関する決定事項としては、7MHz帯で100kHz幅が新たに配分されるなど大きな変化がありました。 主な決定事項は次のとおりです。 |
(1) 7MHz帯周波数の再編成について 次表のとおり、第1地域(ヨーロッパ・アフリカ)と第3地域(日本が属するアジア太平洋地域)の7MHz帯のアマチュア無線用周波数に新たに100 kHz幅の周波数が追加され、2009年3月29日に実施されることになった。(第1と第3地域のいくつかの国は、7,100kHz 〜7,200kHzを固定業務、移動業務にも付加配分) 第2地域(南北アメリカ)は変更なし。(7,000kHz 〜7,300kHz) |
業務に対する分配 |
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第1地域 |
第2地域 |
第3地域 |
6 765〜7 000 固定 移動(航空移動(R)を除く) (脚注:省略) |
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7 000〜7 100 アマチュア・アマチュア衛星 5.140 5.141 5.141A |
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7 100〜7 200 アマチュア 5.141A 5.141B 5.141C 5.142 |
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7 200〜7 300 放送 |
7 200〜7 300 アマチュア 5.142 |
7 200〜7 300 放送 |
7 300〜7 400 放送 (脚注:省略) |
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7 400〜7 450 放送 (脚注:省略) |
7 400〜7 450 固定 移動(航空移動を(R)除く) |
7 400〜7 450 放送 (脚注:省略) |
7 450〜8 100 固定 移動(航空移動(R)を除く) (脚注:省略) |
- 脚注 - |
5.140 付加配分:アンゴラ、イラク、ケニア、ルワンダ、ソマリア及びトーゴでは、7,000〜7,050kHzの周波数帯は、一次的基礎で固定業務にも分配する。 |
5.141 代替分配:エジプト、エリトリア、エチオピア、ギニア、リビア及びマダガスカルでは、7,000〜7,050kHzの周波数帯は、一次的基礎で固定業務に分配する。 |
5.141A 付加配分:ウズベキスタン及びキルギスでは、7,000〜7,100kHz及び7,100〜7,200kHzの周波数帯は、二次的基礎で固定業務及び陸上移動業務にも分配する。 |
5.141B 付加配分:2009年3月29日より後に、アルジェリア、サウジアラビア、オーストラリア、バーレーン、ボツワナ、ブルネイ、中華人民共和国、コモロ、大韓民国、ディエゴ・ガルシア、ジブチ、エジプト、アラブ首長国連邦、エリトリア、インドネシア、イラン、日本、ヨルダン、クウェート、リビア、モロッコ、モーリタニア、ニュージーランド、オマーン、パプアニューギニア、カタール、シリア、シンガポール、スーダン、チュニジア、ベトナム及びイエメンでは、7,100〜7,200 kHzの周波数帯は、一次的基礎で固定業務及び航空移動(R)を除く移動業務にも分配する。 |
5.141C 第1地域及び第3地域では、7,100〜7,200 kHzの周波数帯は2009年3月29日までは、一次基礎で放送業務に分配する。 |
5.142 2009年3月29日までは、第2地域でのアマチュア業務による7,100〜7,300 kHzの周波数帯の使用は、第1地域及び第3地域内で使用する放送業務に制限を課してはならない。2009年3月29日より後に、第2地域でのアマチュア業務による7,200〜7,300 kHzの周波数帯の使用は、第1地域及び第3地域内で使用する放送業務に制限を課してはならない。 |
(2) アマチュア規則 | |
アマチュア業務・アマチュア衛星業務の規定改正について、次のように決定しました。 | |
第25.1号 | §1 異なる国のアマチュア局相互間の無線通信は、関係国の一の主管庁がこの無線通信に反対する旨を通知しない限り、認められる。(変更) |
第25.2号 | §2 1) 異なる国のアマチュア局相互間の伝送は、第1.56号に規定されているアマチュア業務の目的及び私的事項に付随する通信に限らなければならない。(変更) |
第25.2A号 | 1A) 異なる国のアマチュア局相互間の伝送は、地上コマンド局とアマチュア衛星業務の宇宙局との間で交わされる制御信号は除き、意味を隠すための暗号化されたものであってはならない。(追加) |
第25.3号 | 2) アマチュア局は、緊急時及び災害救助時に限って、第三者のために国際通信の伝送を行うことができる。主管庁は、その管轄下にあるアマチュア局への本条項の適用について決定することができる。(変更) |
第25.4号 | (削除) |
第25.5号 | §3 1) 主管庁は、アマチュア局を運用するための免許を得ようとする者にモールス信号によって文を送信及び受信する能力を実証すべきかどうか判断する。(変更) |
第25.6号 | 2) 主管庁は、アマチュア局の操作を希望する者の運用上及び技術上の資格を検証するために必要と認める措置を執る。能力の基準に関する指針は、最新版の勧告ITU-R M.1544に示されている。(変更) |
第25.7号 | §4 アマチュア局の最大電力は、関係主管庁が定める。(変更) |
第25.8号 | §5 1) 憲章、条約及び無線通信規則のすべての一般規定は、アマチュア局に適用する。(変更) |
第25.9号 | アマチュア局は、その伝送中短い間隔で自局の呼出符号を伝送しなければならない。(変更なし) |
第25.9A号 | §5A 主管庁は、災害救助時にアマチュア局が準備できるよう、また通信の必要性を満たせるよう、必要な措置を執ることが奨励される。(追加) |
第25.9B号 | §5B 主管庁は、他の主管庁がアマチュア局を運用する免許を与えた者が、その管轄内に一時的にいる間に、主管庁が課した当該条件又は制限事項に従うことを条件として、アマチュア局を運用する許可を与えるかどうか、決定することができる。(追加) |
第25.10号 | §6 この条の第I節の規定は、できる限りアマチュア衛星業務にも同様に適用する。(変更なし) |
第25.11号 | §7 アマチュア衛星業務の宇宙局を許可する主管庁は、アマチュア衛星業務の局からの放射に起因する有害な混信を直ちに除外することができることを確保するため、打ち上げ前に十分な地球指令局を設置するよう措置する。(第22.1号参照)(変更) |
なお、以上の改正は、決議96(WRC-03)により、本年7月5日より暫定的に適用できることとなりました。 | |
また、上記の改正に伴うアマチュア業務及びアマチュア衛星業務の定義については、変更の必要性は認められないという結論で合意されました。 |
(3) アマチュア用コールサインについて |
第19条にあるアマチュア局に付与できるコールサインの構成について、次のように決定しました。 |
1. 第19.49 c) 号、使用できない組み合わせ「アマチュア局については、アラビア数字で始まる組み合わせで、その第2字目がO又はIの文字であるもの」を削除 |
2. 第19.50.1号を次のとおり変更 B, F, G, I, K, M, N, R, W及び2で始まる呼出符号については、最初の1字のみ国籍識別のために必要となる。符号列を二分している場合(例えば、最初の2字が複数の加盟国に分配される場合)、最初の3字は国籍識別のために必要となる。 |
3. 第19.68号を次のとおり変更 − 1字(B, F, G, I, K, M, N, R又はWの文字である場合)、1桁の数字(0又は1以外)、4字以下のグループ名が続き、最後は文字であること 又は、 − 2字、1桁の数字(0又は1以外)、4字以下のグループ名が続き、最後は文字であること。 |
4. 第19.68A号の追加 特別な場合、一時的に使用するために、主管庁は第19.68号で規定された4字以上の呼出符号の使用を許可することができる。 |
5. 第IV節 無線電話を使用する局の識別にアマチュア局及び実験局を追加 19.82A号 §35A アマチュア局及び実験局 − 呼出符号(第19.68号参照) |
なお、以上の改正も、決議96(WRC-03)により、本年7月5日より暫定的に適用できることとなりました。 |
(4) 430MHz帯について |
WRC-97の際、オランダから熱帯及び温暖気候地域における森林の面積と破壊率を観測する地球探査衛星(能動)業務に432〜438 MHzの6MHzを分配すべきとの提案があった。このときは、多くの国におけるアマチュア業務との共用の懸念から分配に変更はなかった。 その後ITU-Rの第7委員会を中心に、アマチュア業務を含むこの周波数帯を使用する既存業務との共用検討が行われ、これらを保護するITU-R 勧告 SA.1260が策定された。 今回のWRCでは、この勧告の遵守が義務づけられたかたちで432〜438MHzの6MHzを地球探査衛星(能動)業務に二次業務として分配することとなった。 |
業務に対する分配 |
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第1地域 |
第2地域 |
第3地域 |
430〜432 アマチュア 無線標定 (脚注:省略) |
430〜432 無線標定 アマチュア (脚注:省略) |
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432〜438 アマチュア 無線標定 地球探査衛星(能動) 5.279A (他の脚注:省略) |
432〜438 無線標定 アマチュア 地球探査衛星(能動) 5.279A (他の脚注:省略) |
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438〜440 アマチュア 無線標定 (脚注:省略) |
438〜440 無線標定 アマチュア (脚注:省略) |
- 脚注 - 5.279A 地球探査衛星業務(能動)のセンサーによるこの周波数帯の使用は、ITU-R 勧告 SA.1260-1に従うものとする。さらに、432〜438MHz帯の周波数帯における地球探査衛星業務(能動)は、中華人民共和国の航空無線航行業務に有害な混信を生じさせてはならない。この脚注の規定は、地球探査衛星業務(能動)が無線通信規則第5.29号及び第5.30号に従った二次業務として運用することを何ら損なうものではない。 |
(5) 5.6 GHz帯について |
WRC-2000において5GHzでの移動、固定、地球探査、宇宙研究業務等への各国の提案を統合して、WRC-03での分配の見直しが議題とされた。今回5,150〜5,725MHzの周波数帯で分配の変更があり、アマチュア業務に関わる周波数帯としては5,650〜5,725MHzに、無線LANを含む無線アクセスシステム実現のために、移動業務(航空移動 (R)を除く)が分配された。 |
業務に対する分配 |
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第1地域 |
第2地域 |
第3地域 |
5 650〜5 725 無線標定 移動(航空移動 (R)を除く) 5.446A 5.450A アマチュア 宇宙研究(深宇宙) (他の脚注:省略) |
- 脚注 - 5.446A 移動業務の局による5,150 - 5,350 MHz帯及び5,470〜5,725 MHz帯の周波数帯の使用は、決議第229(WRC-03) に従わなければならない。 |
5.450A 5,470〜5,725 MHz帯の周波数においては、移動業務の局は、無線測位業務からの保護を要求してはならない。無線標定業務は、ITU-R 勧告 M.1638に示すものよりも、厳格な保護基準を移動業務に課してはならない。 |
(6) コールサイン・シリーズ |
東ティモール民主共和国に暫定的に割り当てられていた4WA-4WZのコールサイン・シリーズは、今回のWRC-03で正式に承認されました。 |
(7) WRC-07の議題 |
2007年に開催が予定されているWRC-07の議題の一つに、アマチュア・バンドが含まれる4〜10MHz帯のHFバンド分配の見直し、並びに135.7〜137.8kHzの周波数帯に二次的基礎でアマチュア業務に分配すること、が挙げられました。 |