■豊田こども科学探検隊の子供たちが 国際宇宙ステーションとの交信に成功
2011年4月18日18:57、豊田市生涯学習センター「保見交流館」(愛知県豊田市保見町)で活動する「豊田こども科学探検隊」のメンバーの10人子供たちが、国際宇宙ステーションに長期滞在中のキャサリン・コールマン宇宙飛行士(KC5ZTH)との交信に成功しました。
今回のスクールコンタクトは、JARL東海地方本部、豊田市、中京大学等の協力で、日本人宇宙飛行士との日本語による交信を目標として2009年7月から準備が進められたもので、「豊田こども科学探検隊」の子供たちは、公募により集まりました。国際宇宙ステーションとの交信の日を目標に、科学に関する勉強会などさまざまな活動をしてきましたが、日本人宇宙飛行士との日本語交信は待ち期間が長期間に渡ることから、目標を「外国人宇宙飛行士との英語による交信」に転換して実施されることとなりました。
「豊田こども科学探検隊」のスクールコンタクトの詳細レポートを、種村一郎東海地方本部幹事長からいただきましたのでご紹介いたします。
●豊田子供科学探検隊を結成
JARLニュース2008年秋号の「若田光一宇宙飛行士、野口聡一宇宙飛行士とのスクールコンタクト実施団体の募集」
の記事により愛知県においてスクールコンタクトを申請した、旭学舎(尾張旭市)8N2OA、
船方小学校(名古屋市)8N2FEに続き、おこなわれたのが今回の豊田こども科学探検隊(豊田市)8N2Tです。
2009年4月に東海地方本部(実施責任者:7L1FFN 磯 直行さん)が中京大学情報理工学部を連携機関として申請していたJST(独立行政法人 科学技術振興機構)の平成21年度 地域の科学舎推進事業「地域活動支援」(連携型)に採択されたのを契機に、磯さんを中心に「豊田こども科学探検隊」が組織され、直ちに準備に取りかかりました。
会場を「保見交流館」に決定して後援を含む会場確保のための打合せ、豊田市教育委員会との事前打ち合わせを重ねました。
参加者は、豊田市広報誌「広報とよた」に市内全小中学生を対象として公募しました。公募説明会は7月11日の「保見交流館」でおこなわれましたが、当日は「武芸川中学校のスクールコンタクト」が実施され、参加者は若田光一宇宙飛行士の生の声を聞ける機会となり、本番でもないのに涙して感動されていました。
その後、7月から12月にかけてJAXA招聘講師による講演会、工作教室、電波体験教室の3回の研修会を経て、スクールコンタクト実施の連絡を待つことになりました。
●交信日決定
2011年3月24日にARISS委員会の安田 聖さん(7M3TJZ)から待望の「スクールコンタクト実施のお知らせ」が届き、交信可能日は4月18日から23日までと連絡がありました。軌道等を検討の結果、4月19日(第1希望)と4月18日(第2希望)を実施候補日とする事をお願いいたしました。また、希望コールサインを8J2Tとしました。
1年以上の待機期間があったのでさっそく参加者との連絡をおこない、3月13日に第4回研修会を実施しました。11名の希望者が集まり、10名のチャレンジャーが決定しました。残りの1名は交信当日には高校生となるため残念ですが辞退していただき、我々スタッフの一員としてご参加いただくこととなりました。
また宇宙飛行士に対する質問文を20通受理しました。参加者にできるだけ早く英訳質問文を手渡すべく、第5回研修会を1週間後の3月20日とし、質問文の英訳は過去のARISSでの英語指導をお願いし、中部大学のデビット・ローレンス准教授にご快諾いただきました。第6回研修会は4月10日に英語研修を中心に行われ、実戦に備えた英語による模擬交信訓練も実施しました。また、参加者ご父兄による会場ディスプレーの製作も熱を帯びてきました。
3月31日にARISS委員会より、交信日は4月18日19:05からと正式連絡がありました。
●交信開始
4月18日、交信に先立ち開会セレモニーがおこなわれ、木村東海地方本部長の挨拶に続き、笠井保弘豊田市教育委員会教育長、水野孝幸豊田市社会部長、井口弘和中京大学情報理工学部学部長(代理 鈴木勝也氏)ほか多くの来賓をお迎えして盛大におこなわれました。
また、当日は144MHz帯を対象に、東海総合通信局電波監理部監視課とJARL東海地方本部監査指導委員会による東海総合通信局規正局およびJARLガイダンス局の合同運用がおこなわれました。90分前の最終リハーサル中に違法局が入感するハプニングがありましたが、素早く対応していただき事なきを得ました。
交信は事前の公式発表より予定時間が早くなり、18:56からが交信開始時間です。
毎回の事ですが、地上の呼びかけに対して応答のあるまでの時間がとても長く感じられます。今回の宇宙飛行士はキャサリン・コールマンさん(KC5ZTH)で、過去2例に続き3人目の女性宇宙飛行士です。クリアに入感しているとの応答のあと、順調に質問と回答が繰り返されます。今回は20質問を準備していましたが、20番目の回答の前にフェードアウトし、19質問が交信に成功しました。最後のメッセージが聞き取れなかったのが残念でしたが、会場からは期せずして100名以上の見学者の拍手が響き渡りました。
ジョーダン・ジョンソンさんによる回答に対する翻訳発表のあと、参加者は記念撮影を終え、新聞社の取材攻勢を受けて興奮さめやらぬ状況で会場をあとにしました。
翌朝の新聞には写真付きで「宇宙ステーションと交信」の記事が大きく掲載されました。
★ ★
会場で耳にすることはできなかったのですが、実は、キャサリン宇宙飛行士からはとても素晴らしいファイナルメッセージをいただいていました。JA0CAW佐藤哲明さんのHPに新潟市で受信していただいた音声がアップされています(TNX JA0CAW)。
「もし聞こえていたら今日のすべての子供たちへ。素晴らしい質問と上手な英語と好奇心をありがとう。私たちはあなたたちの好奇心が必要です。そして学校の勉強をがんばってください。そうすれば宇宙のようなワクワクする所に行く活動を続けさせる事ができるのです」
これからも、このARISSスクールコンタクトの体験を通して、子供たちには忘れられない感激、喜び、自信が深く刻み込まれたと信じています。キャサリン宇宙飛行士が送ったメッセージを我々も忘れず、「知的好奇心探求」を今後とも継続してこの活動に参画して参ります。
今回の「豊田こども探検隊」ARISSスクールコンタクトの実施にあたり、本当に数多くの皆さまのお力添えとご協力をいただきました。文末になりましたが、関係者の皆さまに心よりお礼申し上げます。
レポート:JARL東海地方本部幹事長
種村一郎さん(JG2GFX)
(5月17日)
|