長野県上伊那郡辰野町の辰野町開発公社荒神山公園管理施設「ふれあい」で、3月24日09:40(JST)からARISSスクールコンタクトが実施され、辰野町の小学校の児童が国際宇宙との交信に成功しました。
このスクールコンタクトは、地元のボランティアによって設立された、「たつの宇宙少年団」(JA0CQP小松豊昭代表)によって実施されたもので、辰野町近隣の5つの小学校(東小学校、西小学校、南小学校、川島小学校、両小野小学校)に呼びかけて集まった、小学5年〜6年生の児童20名が交信にチャレンジしたものです。
●国内で初の土曜日・午前中の交信
スクールコンタクトの交信は通常、国際宇宙ステーション内の宇宙飛行士の勤務時間(06:00起床、21:30就寝、UTC)に併せて実施されています。
そのことから、過去日本で実施されたスクールコンタクトは、すべて国際宇宙ステーション時刻ではお昼に当たる、日本時間の夕刻から夜半の交信でした。
しかし、このスクールコンタクトは、NASAのSTS-117ミッションで3月16日に打ち上げが予定されていた、スペースシャトル・アトランティスのドッキングに併せた勤務時間シフトの関係から、日本国内では過去前例のない土曜日の午前の実施となりました。
今回のスクールコンタクトのとりまとめをおこなった、小松さんは次のように語っています。
『準備は4月下旬実施の予定で順調に進んでいま
したが国際宇宙ステーションの業務の関係で、3月24日(土)09:39に実施が決定した旨の連絡を受けたのは、3月14日早朝でした。国際宇宙ステーションとの交信を目標として「たつの宇宙少年団」の活動に参加した児童は20名いますが、春休みの予定があって参加できない児童が1名出てしまったのはちょっと残念でした』
また早朝の実施ということもあって、無線設備の準備は前日23日の午後に実施されましたが、23日夕刻には交信会場の小ホールの使用予定が入っていたため、会場の設営は当日の06:00から、少年団のボランティアスタッフの手で大急ぎで実施されました。
●コントロールオペレーターは校長先生
今回のスクールコンタクトのために臨時に開設した社団局は8J0T。コントロールオペレーターのJA0AWK栗林良裕さんは、辰野町立川島小学校の校長先生です。
栗林さんは『実は以前、小松さんほか、今回ボランティアを
つとめている地元スタッフの方々から、「川島小学校でスクールコンタクトを実施しませんか」という熱心な呼びかけをいただいたのです。私自身も地元出身のアマチュア無線家の一人ですから、みなさんは私が1アマの免許を持っているということを知っていらっしゃったんですね。
児童たちにとって夢や魅力がいっぱいのプロジェクトです。1校の取り組みにとどめることなく、辰野町内の全小学校に呼びかけて参加希望の児童を募ろうということになったのです』と語っています。
各小学校に呼びかけて集まった子供たちをメンバーとして、「たつの宇宙少年団」を2006年8月設立。各種の勉強会などを実施してきました。
●辰野の小学生たちの声、宇宙に届く!
3月24日08:00ごろ、スタッフによる会場の準備が大急ぎで進む中、少年団メンバーの子供たちや保護者の方々ほかが、会場に集まってきました。信越地方では初の実施ということもあり、テレビ・新聞ほか地元マスコミの記者やカメラマンなども多数来場。
08:40には矢ヶ崎克彦辰野町長ほかの来賓を迎えて、開会式が実施されました。開会式を終えてしばしの休憩の後……。
09:30、来るべき本番の交信に向けて子供たちが待機。
辰野町は天竜川流域の盆地の一帯です。標高1200mクラスの山が町を取り巻くようにそびえ立っています。交信会場の荒神山パークの標高は約740mですから、国際宇宙ステーションのAOS時刻は少し遅く、LOS時刻は少し早くなります。
このため軌道計算上のAOS時刻は09:39ですが、09:40ごろコントロールオペレーターの栗林さんが、国際宇宙ステーションのアマチュア局NA1SSのコールを開始しました。
数回のコールの後、国際宇宙ステーションのマイケル・ロペス・アルグリーア宇宙飛行士(KE5GTK)から、大変強力なコールバックがあり、途中、宇宙ステーションの姿勢の関係からか、シグナルが届かなくなったことはありましたが、当日参加の19名の少年団メンバーが、無事19問の質問を国際宇宙ステーションにすることができ、会場は大きな歓喜の渦に包まれました。
●ARISSスクールコンタクト国内全エリア実施達成の瞬間
このスクールコンタクトは国内25例目となりますが、信越エリアでの実施は初めてとなり、日本のARISSスクールコンタクト史上では、2001年11月23日に埼玉県入間市の入間市児童センター無線クラブ(JK1ZAM)が初成功して以来、5年半がかりでの国内全エリア達成となりました。
(3月24日)
|