5月26日20:12、埼玉県さいたま市立宮原中学校でスクールコンタクトが実施され、若田宇宙飛行士と11名の後輩生徒が交信に成功しました。国内でのARISSスクールコンタクト成功は今回が33例目となります。
さいたま市立宮原中学校の
スクールコンタクト現場再現 |
定刻の20:12少し前から、マイクコントロールの吉田さんが、国際宇宙ステーション(NA1SS)の若田宇宙飛行士へのコールを開始しました。 |
|
吉田さん…『This
is scheduled contact, NA1SS this is 8J1KW.さいたま市立宮原中学校より若田さん聞こえますか。どうぞ』
…………………………応答なし………………………………
吉田さん…『This
is scheduled contact, NA1SS this is 8J1KW.さいたま市立宮原中学校より若田さん聞こえますか。どうぞ』
…………………………応答なし………………………………
吉田さん…『NA1SS
this is 8J1KW. 若田さん聞こえますか。どうぞ』
…………………………応答なし………………………………
吉田さん…『NA1SS
NA1SS this is 8J1KW.さいたま市立宮原中学校より若田さん聞こえますか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『宮原中学校のみなさん、国際宇宙ステーションから若田です。よく聞こえています。こんばんはー。みなさんの質問にお答えしたいと思います。国際宇宙ステーションは今、「ゲナディ・パダルカ」コマンダー(ロシア)、アメリカの「マイク・バレット」フライトエンジニア、そして私JAXAの「若田光一」がフライトエンジニアとして3人で運用を軌道上でおこなっています。それではみなさん、質問をどうぞ』 |
|
質問1…『宇宙は空気や重力もなく、生活空間が地球とはまるで違う環境ですが、その中で一番驚いた現象とは何ですか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『はい、船内は、重力は宇宙にも地球の周りにはあるんですけども、自由落下しているものが放物運動をして自由落下している状態ですので、中があたかも重力がない環境になっています。この重力環境で驚いたのは、やはり人間が数日から1ヶ月程度でこの無重力環境に完全に適用していけるってこと、これが本当にとても驚いた現象です』 |
|
質問2…『宇宙では重力がないので、上下の感覚がなくなると思いますが、上下の感覚とはどのような感じですか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。天井のところに座っても、壁のところに座っても、それが新しい床になるって感じですね。耳の耳石以外からのシグナル、つまり目から出てくるシグナルで上下を決定できるので逆立ちして移動したりすると、同じ空間の中でも新しい家の中に入ったような感じがします。どうぞ』 |
|
質問3…『宇宙空間で水をまくと、水は一瞬で散った後、氷として固まると聞きましたが、有機物を宇宙空間に放り出したとすると、有機物はどうなってしまうのかを教えてください。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。有機物自体は、まぁそのままの化学組成を維持しますけども、生命体の場合たとえば、人間とか動物もそうですけども、宇宙空間に放り出されると、たとえば人間のような場合だったら、動物でもそうですけど15秒ぐらいで気を失ってしまいます。これは、血液の循環が真空に入ったとたんに止まるからで、気絶して、しかも体温の温度でもうすでに水が沸騰してしまうということで、15秒で気絶してしまうという非常に厳しい環境です』 |
|
質問4…『地球では暗闇に光を当てると、光は空間を帯状から末広がりに広がって進みますが、宇宙空間では光の筋はどのように見えますか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。光の筋が見えるのは太陽光線で、しかもそれが地球を照らしている太陽光線、たとえば朝とか夕方ってのは、雲の影の筋が長く伸びていますけども、それは直線を描いて進んでいるのがよく見えます。ですから地球で太陽の影を見るのとほとんど同じように見えています。どうぞ』 |
|
質問5…『地球では夜になると、光量が減少するため立体感が消えて、ビルは窓の光のみが平面上に浮かんで見えますが、宇宙空間で惑星を見るとどう見えますか。立体感はありますか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『これは、すごくおもしろい質問だよね。金星とか、天体望遠鏡を持ってきていないので、金星など肉眼でよく見える惑星はよく見えて、とても明るいですね。まぁ、そういう惑星とか天の川とかが、非常にここから見ると三次元的に広がっているのがよくわかります。地球上にいるときよりもね。ですから、立体感というのは星空を見ていると本当に感じます。どうぞ』 |
|
質問6…『地球では昼より夜になるにつれ光量の減少により視野が狭くなり活動範囲が減少されますが、暗黒の闇である宇宙では視野は地球上とどう変わっているのですか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。おもしろい。視野自体は宇宙船の窓の広さとか、それからあと船外活動をする場合にはヘルメットから見える範囲で、その視野っていうのが決まってきますね。ただ人間自体が持っている視野っていうのは、地球上とほとんど変わらない感覚です。どうぞ』 |
|
質問7…『宇宙空間は空気がないので、光は直進し屈折率が地上と異なっていると思いますが、地球上での距離感とどんな違いが生じていますか。また、この距離感の変化は作業にどんな影響を与えていますか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『これは非常におもしろい質問ですね。屈折率は真空と空気中では多少違いますけども、目に見えるほど屈折率の違いによって見え方が変わるってことはないです。で、たとえばこの船内のほうは1気圧の空気で満たされていますので、地上で見る距離感とほとんど変わらないです。どうぞ』 |
|
質問8…『生物は環境に合わせて進化すると学習しましたが、もし近い未来、人が宇宙で生活するようになったとすると、人の感覚器の中でどの部分が一番宇宙への適応変化を起こしやすいと考えますか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。これはやはり無重力ですと耳石の働きってのが地球上のような働きをしないわけですね。重力で引かれないので目を閉じたとき、どっちが上でどっちが下かってのがわかんなくなる。ですから、たとえば耳石みたいな耳の前庭だとか三半規管、そういったところが宇宙で生きていくときに進化していくんじゃないかなというふうに思います。どうぞ』 |
|
質問9…『今まで宇宙飛行士になるためにとてつもない努力をしてきたと思いますが、今、若田さんが宇宙に行ってみて「本当に今までがんばってきてよかった」と思えるくらい宇宙はきれいですか。その魅力を教えてください。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『そうですね。宇宙は本当に暗黒ですね。で、星空はきれいですけども、それと同時にやはり一番心に残る印象、景色って言うのは青い地球ですね。青いオアシスのような地球を見ながら、本当にこのすばらしい宝石のように輝く地球を見て、地上のみなさんと一緒に仕事ができて、それが世界各国の人たちと一緒に仕事ができてるってこと、この瞬間を本当にここまでつらい訓練をしてきて、がんばってきてよかったなという風に思える瞬間だと思います。どうぞ』 |
前問で当初の予定質問9問を終了しました。マイクコントロールの吉田さんは、さらに2名の生徒が当日考えた新たな質問を継続する旨を、若田宇宙飛行士に伝えています。 |
|
吉田さん…『若田さん、ここからは予定質問ではありませんが、少し時間があるようなので質問を続けさせていただきます』 |
|
質問10…『地球はすごい速さで回っているので、宇宙から地球に着陸するとき、着陸地が見えたときに着陸地に向かったら間に合わないと思うのですか。どうやって着陸をするのですか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『はい、そうですね。スペースシャトルや、ソユーズ宇宙船、僕たちが地球に帰還するときに使う宇宙船ですけども、宇宙ステーション自体も時速28,000kmで飛んでいるんですね。ですから、だいたい目的地の着陸地、アメリカのフロリダですとか、ロシアの南のほうのカザフ共和国、そういったところから地球の反対側ぐらいから逆噴射をしてスピードを落として大気圏に入って着陸するようにしています。どうぞ』 |
|
質問11…『宇宙でも地球上と同じように、場所によって時差があるのですか。どうぞ』
若田宇宙飛行士…『えーっとねー、僕たちが使っている時間はグリニッジ標準時です。イギリスの時間ですね。それで毎日生活しています。ですから、いまもこちらは11:20ぐらいですけども、宇宙船の中ではその時間を使っていますので、時差ぼけとかはありません。どうぞ』 |
|
吉田さん…『NA1SS
this is 8J1KW. これで全部の質問が終わりになります。若田さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。若田さんのミッションの成功と、健康を生徒一同お祈りしています。NA1SS
this is 8J1KW. ありがとうございました』
若田宇宙飛行士…『8J1KW
this is NA1SS. どうもありがとうございました。宮原中学校のみなさん、宮原のみなさん、本当にみなさんとお話ができて懐かしい感じがします。また、これから後はみなさんと宇宙での体験についてお話させていただきたいと思います。それではみなさん、夢に向かって、目標に向かってがんばってください。失礼しまーす』
吉田さん…『ありがとうございました』
……………… 場内に歓声、拍手 ……………… |
無事交信が終了。会の終了に際して横田守正校長は「はい、今、思わず拍手が出ましたけれども、非常に感動的な場面を目にすることができました。非常に質問内容も中学生らしくてよかったなぁと思います。これをぜひ、最後に若田さんが言ったように、夢につないでほしいと思っています」と、今回参加した生徒たちに向けて語っています(写真右)。