2008年3月26日、京都リサーチパーク(KRP)内にある京都高度技術研究所(ASTEM、京都市下京区中堂寺南町134番地)に
おいて、18名の子供たちがARISSスクールコンタクトで国際宇宙ステーションの宇宙飛行士との
交信に成功しました。
このスクールコンタクトは日本国内では28例目、関西地方では11例目の実施となりますが、
京都府内での実施は初めてで、交信する子供たちの中に、小学校1年生を含んだ実施は、
2005年9月2日に「愛・地球博会場内」アマチュア無線ブースで実施された、スクールコンタクト
以来です。
準備から実施まで、今回の実施のとりまとめをおこなった、JH4KHY藤川昌浩さんからレポートを
いただきましたのでご紹介しましょう。
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今回のARISSスクールコンタクトは、特定非営利活動法人子どもサポートプロジェクトが
主催し、京都市立七条中学校の生徒16名と小学生2名の計18名が参加し、実施されました。
因みに、最年少は小学1年生(7歳)です。
「子どもサポートプロジェクト (略称:子サポ)」は、子どもにかかわる仕事をして
いる人々や保護者をサポートし、互いに助け合えるコミュニティを創ることを大きな目的
にしています。この事業の一環として、約1年前に京都でARISSスクールコンタクトを実施
しようと準備に取り掛かりました。
そして、4回の事前授業をおこない、2007年末には国際宇宙ステーションとの交信ができる
準備を整えました。
ところが、NASA、国際宇宙ステーションでの事故やトラブルのため、2007年度内の実施が
絶望的となりました。今回参加した子供たちの半数近くは中学3年生で、平成14年総務省告示
第154号による交信ができる最後のチャンスです。年明け早々に、京都市立七条中学校の
全校生徒の前で、ARISSスクールコンタクトの状況を説明することになっていたのですが、
その説明に赴く予定の関係者は悲壮な思いのまま年末年始を迎えることになりました。
しかし、メンバーの熱い想いがNASAを動かしたのか、3月に予定されている国際宇宙ステーション
の建設工事終了後に交信できるチャンスがまわってきたのです。
それから慌しく準備を進め、国際宇宙ステーションの建設工事が予定通り進むことを祈り
ながら交信当日を迎えることとなりました。そして、土井さんのすばらしい活躍のお陰で
建設工事が予定通り完了し、我々のARISSスクールコンタクト実施の当日を迎えることが
できました。
2008年3月26日19:41 に今回のスクールコンタクトのために臨時に開設した社団局8N3KRPをオペレートする屋田純喜さん(JL3JRY)が、国際宇宙ステーションの
アマチュア局NA1SSをオペレートする、ギャレット・レイズマン宇宙飛行士(KE5HAE)をコールを
開始しました。
しかし「1回、2回、3回、………」・・・とコールしますが、宇宙からの応答はありません。
コール開始から1分経過し、アンテナ制御用コンピュータのモニター上を国際宇宙ステーション
の軌跡がむなしく移動して行きました。
この間スタッフは、「周波数は正しいか」「電波は出ているか」「アンテナの向きは正しいか」
等々、考えられることはすべて再チェックしています。
さらにコール開始から2分経過し、会場内が重苦しい空気に包まれている中、コールを始めてか
ら約2分20秒後、12回目の呼びかけにようやく宇宙からの応答がありました。
会場内は大喜びしたいのをぐっとこらえて、子供たちの交信の邪魔をしないよう見守りました。
そして、今まで練習した以上に落ち着き、満面の笑顔を浮かべて子供たちの質問が始まりました。
「1問、2問、3問、………」と途中ノイズにより聞き苦しいところはありましたが、順調に質問と
応答が繰り返されて行き、18名による20問、予定したすべての質問が終りました。
最後に、余裕が出てきたところで、屋田さんが日本の宇宙実験棟「きぼう」の建設のために、
国際宇宙ステーションに滞在した、「土井隆雄宇宙飛行士」のことについて ギャレット・レイズマン宇宙飛行士に
質問しました。もちろん、レイズマン宇宙飛行士からは、土井宇宙飛行士を賞賛する応答があったのは言うまでもありません。
今回のARISSスクールコンタクトは、さまざまな困難に遭遇しましたが、参加者全員が
「何としても実施するんだ」という熱い想いで壁を1つずつ乗り越えて行きました。
そうして得たARISSスクールコンタクトの成功でした。きっと、子供たちの胸にもすばらしい思い出となって
刻まれたことだと思います。子供たちが自発的にスタッフを集め、感謝の言葉を言ってくれた
ことがすべてを語っていると思います。
このARISSスクールコンタクトでは、お手伝いいただいたスタッフのみなさん、会場を
快く提供していただいた京都リサーチパーク、京都高度技術研究所の関係者の方々、
そして多大なご支援をいただいた企業のみなさんに、この場をお借りしてお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
(レポート:JH4KHY 藤川昌浩)
(4月1日) |