アマチュア衛星AO-16(AMSAT-OSCAR16、PacSAT、写真右)は、1990年1月22日に、デジタル通信用として打ち上げられたマイクロサットタイプのアマチュア衛星です。AO-16は、JARLの「ふじ(1号〜3号)」と同様、JDモードのストアアンドフォワード(Store and forward=蓄積転送)タイプのデジタル中継器(アップリンク144MHz MFSK、ダウンリンク430MHz BPSK)が搭載された衛星ですが、昨年ハードウエアの障害が発生し運用停止の状態が数カ月間続きました。
AO-16は管制チームの復旧作業により、昨年11月にテレメトリーの送信を再開しましたが、その後も復旧作業のため、利用が不可能な状態になっていました。
しかしARRLが1月23日付けで報じた記事によると、AO-16は管制チームの復旧作業により、本来の「デジタル中継のアマチュア衛星」としてではなく、「アナログ音声中継のアマチュア衛星」に生まれ変わって蘇った模様です。
以下に、ARRLの記事を翻訳、転載してご紹介します。
★彡 AO-16(PacSAT)が音声中継サービス (アップリンクFM、ダウンリンクSSB)
アマチュア衛星AO-16(AMSAT-OSCAR-16、PacSAT)は、ハードウエア障害により最近は運用が不可能な状態となっていました。そのかたわら、衛星の管制チームはAO-16に搭載されたコンピュータの障害からの復旧作業をおこなっていました。
現在、AO-16は管制チームの復旧作業により、アップリンクにFM音声を使用し、ダウンリンクにSSBを使用する音声レピータとしての活用が可能となっており、試験運用が特に期限を設けられることなくおこなわれています。
★彡 AO-16の復旧作業
AO-16の復旧作業はおよそ6カ月前から開始され、管制チーム(ブルース・ラーン氏(WB9ANQ)、ジム・ホワイト氏(WD0E)、マーク・ハモンド氏(N8MH))は衛星のソフトウエアのほとんどすべてを再ロードすることを試みました。管制チームはメモリーのテストを実施し、ソフトウエアの再起動の妨げとなるハードウエア障害を発見しました。
AMSAT副会長のドリュー・グラスブレナー氏(KO4MA)は、「AO-16に搭載のコンピュータ・システムが故障して、運用停止を決定する議論になっていましたが、ジム・ホワイト氏(WD0E)とトム・クラーク氏(K3IO)が、ローレベル・コマンドにより復旧を試みました」と語っています。
AO-16に搭載されたローレベル・コマンドの1つに「アップリンク受信機をダウンリンク送信機に直接接続する」というものがあります。しかし、アップリンク受信機は一般的なFM受信機で、ダウンリンク送信機はBPSK送信機です。ダウンリンクはDSB(両側波帯)であることから、管制チームのマーク・ハモンド氏(N8MH)は、ひとまずこのコマンドをAO-16に設定して、試験を実施しました。
★彡 アナログ音声中継のアマチュア衛星として蘇ったAO-16
グラスブレナー氏は「受信機にUSBかLSBのいずれかを設定すると、非常に強力なダウンリンクがよく聞こえてきます。まるでリニア中継器のようです。しかもFM衛星と同様アップリンクの周波数調整の必要がありません。個人的な実験ではアップリンクの周波数調整の必要もなく、非常に低い軌道でもアクセスすることができました。無指向性アンテナと430MHz帯プリアンプがあれば使える簡単な衛星です」と語っています。
また「特に期限は設けず運用を開放して試験を実施しています。運用中のAO-16のアップリンクは145.920MHzのFMで、ダウンリンクは437.026MHzのSSB(±ドップラーシフト)です。試験運用中のAO-16で運用する場合は、ダウンリンクを聞くことができる範囲で適切な、最小限のパワーにより運用をおこなってください。また運用に成功したら、E-mailで報告書を送ってください。生まれ変わったAO-16の“新たな生涯”をお楽しみください」と呼びかけています。
【レポートの送付先メールアドレス】ao16(アットマーク)amsat.org
※上記メールアドレスは、スパムメール防止のため「@」を(アットマーク)と表記しています。
(記事出典:ARRL Web、写真:AMSAT)
(1月24日) |